Congress Chemical BreakdownをH8000の歴史と思想から読む

Chemical Breakdownには、Congressというバンドが持っていた怒りと嫌悪がかなり濃く出ている。

この曲が突いているのは、薬物そのものだけではない。身体を自分で壊し、薬でごまかし、その負担を制度に回し、感覚も判断力も鈍らせていく生き方全体が攻撃されている。歌詞の中では、junkとfilthで身体を満たし、高い薬で治そうとし、doctorをmasterのように見て、最後は死へ向かっていく流れが描かれる。ここにあるのは不健康への不安ではなく、自己破壊と依存への露骨な軽蔑だ。この曲をきちんと読むには、Congressというバンドそのものと、彼らが出てきたH8000という土壌を一緒に見たほうがいい。

Congressはベルギー西部、West Flandersのhardcore sceneから出てきた。そこで使われるようになったH8000という呼び名は、単なる地理的な記号ではなかった。Josh Fury自身の説明では、先行世代の8000 crewと、自分たちのようなもっと重く攻撃的な次の世代を区別するためにHを付けたという。後年の本人発言では、そのHにはhateの感覚も重なっていた。Congressはその新しい波の中心にいたバンドで、Joshは自分たちをstraight edgeとextreme metalを混ぜた先駆けだったと振り返っている。Congressをただのベルギー産メタリックハードコアとして処理すると、このバンドの本質は見えにくくなる。

その背景には、West Flanders独特のDIYなhardcore cultureがあった。小さな町どうしがzine、flyer、showでつながり、Vortn Visのような場所がsceneの中心として機能していた。この土台を作ったのはRise Above、Nations On Fire、Blindfold、Spirit Of Youthのような先行世代だ。とくにRise Aboveは、ベルギーではbeer cultureが強くstraight edge sceneは成り立たないと言われていた空気の中で現れたバンドだった。そこからNations On Fire、Shortsight、Blindfold、Wheel Of Progressのような流れが生まれ、後のH8000へつながっていく。Congressはこの土台の上に現れたが、音の重さと思想の硬さでさらに一段先へ進んだ。

Joshがhardcoreに入っていく入口になったのはskateboardingとThrasher Magazineだった。そこでBad BrainsやAgnostic Frontに触れ、さらにベルギーのNations On Fireに強い影響を受けた。本人は、Nations On Fireの歌詞によって自分がvegetarianismとstraight edgeに向かったと話している。この入口を押さえると、Congressの歌詞に何度も出てくる身体、規律、自己破壊への拒否感が見えやすくなる。Congressの歌詞は単なる怒りの吐き出しではなく、どう生きるかという感覚とかなり深く結びついている。

音楽面でもCongressの成り立ちはかなり明確だ。JoshはWheel Of Progressの時点で、hardcoreの態度とmetalのリフをどう結びつけるかを考えていた。本人の言葉では、そこにあったのはSlayer meets Ministryのような発想だった。さらにUxJxと一緒にDreftでdown tunedのdeath metalやdoom metalもやっていた。その低音と重さの感覚が後のCongressに流れ込んでいく。Congressの音は、hardcoreにmetalを後から足したものではない。最初から重さを中心に組み上げられていた。そこにCleveland hardcoreやNew York hardcore、初期black metal、extreme death metal、crust punkまでが混ざり、後のmetalcoreやedge metalの原型のひとつになった。

Congressは1993年冬に、Burning Fightを出発点とする流れの中で形になった。Edward Good Lifeが以前から温めていたCongressという名前を引き継ぎ、最初はRoy Cappanがシンガーだった。デモを録り、ローカルでライブを重ね、やがて7インチとアルバムへ進んでいく。Josh自身は、最初から大きなバンドにするつもりではなく、7インチを出せれば十分だと思っていたと振り返っている。それでもCongressは、結果としてH8000を代表する名前になった。初期作品の時点で、すでにWest Flanders hardcoreの中でも怒りと重さを前に出した存在として浮き上がっていた。

Warehouse RecordsからGood Life Recordingsへつながる流れも重要だ。Edward自身の証言では、Warehouse RecordsはJeroenと自分が動かしており、最初のCongressの7インチもそこから出た。その後レーベル名はGood Lifeへ変わる。Good Life RecordingsはH8000をローカルの熱量だけで終わらせず、外へ押し出す拠点になった。Congressの広がりは、音の強さだけでなく、このDIY流通の支えとも結びついていた。H8000が後にベルギーの一地域名以上の意味を持つようになった背景には、このレーベルの役割もかなり大きい。

思想面でもCongressはかなり明確だ。当時のWest Flandersでは、Joshの回想によればほとんどがstraight edgeかvegetarianだった。Congressもその空気の中にいたし、そのライフスタイルを押し出していた時期もあった。けれど、Congressは最後までstraight edgeという看板に自分たちを閉じ込めようとはしなかった。Josh自身はstraight edgeを八年間実践していたが、Pierreがstraight edgeを降りたあとにはバンドとしてもそのタグを外している。そのまま掲げ続けるのは偽善になるというのが本人の説明だ。この距離感はかなり大事だ。Congressはstraight edge的な価値観を強く持っていたが、名前だけ守るようなバンドではなかった。

この感覚は歌詞にもはっきり出ている。Joshは自分たちの曲について、Slaves of Decayはdrug abuseとdealerの曲、Body WeepsとBlack Demonはanti smokeの曲だと説明している。Prayers 95ではreligionとmeat eatingの矛盾を扱い、Mainstreamでは群れに流されず自分のルールで生きる感覚を語っている。さらにBlackened Persistence期の歌詞は、straight edgeやanimal rightsの問題意識を持ちながら、それを終末的なイメージや暗い比喩で包んでいたと整理されている。Congressの歌詞の芯にあるのは、依存への嫌悪、自己破壊への反発、身体と倫理の問題、同調圧力への拒否だ。Chemical Breakdownも、その線上にある曲として読むとかなり自然だ。

Chemical Breakdownそのものについて、Joshが直接解説した一次証言は今回確認した範囲では見つからなかった。そこは区切っておきたい。けれど、歌詞の流れはかなり明確だ。身体をjunkとfilthで満たし、そのあとexpensive pillsで治そうとする。narcoticsが心臓を速く打たせ、doctorをmasterのように見ている。stateが請求を払ってくれる。麻痺させる薬と愚かにする薬が出てきて、最後は死に行き着く。この流れを素直に追うと、自分で身体を壊し、薬に頼り、制度に寄りかかり、その中で感覚も判断力も失っていく生き方への強い軽蔑が見えてくる。

この曲をdrug songやanti drug songとだけ呼ぶと少し足りない。Chemical Breakdownで嫌われているのは、薬物そのものよりも、その先にある依存の構造だ。身体を壊す生活、医療に丸投げする感覚、社会制度が最後に回収してくれるという甘え、その全部に怒りが向いている。Congressが以前からdrug abuseやanti smokeを歌っていたことを考えると、この曲も同じ軸の上にある。ただ、Chemical Breakdownではそこに医者と国家まで絡んでくるぶん、社会批判の色がより濃くなっている。自己管理を失い、依存を当然のものにし、その結果を社会が引き受ける構図そのものがこの曲の標的になっている。

この曲が入っているのは2000年作のStake Through The Heartだ。この作品はCongressの流れの中でも見落としにくい位置にある。前の時期からCongressはすでにdeath metalやthrash metal寄りへ進んでいたが、Stake Through The Heartではその傾向がさらに進んでいる。同時代の受け止め方を見ても、従来よりmetal化が強まった作品として認識されていた。つまりChemical Breakdownは、初期のrawなedge metalの延長線上にありながら、hardcoreとmetalの比重がさらに動いた時期の曲でもある。Congressの攻撃性が薄れたのではなく、より硬く、より重く、より閉塞感の強い形に変わっていった時期の一曲として見るほうが近い。

この点はH8000全体の変化とも重なる。Rise AboveやNations On Fireの段階では、Boston hardcoreやyouth crew、政治性の強いstraight edge hardcoreの要素が目立っていた。そこからWheel Of Progress、Congress、Liarへ進むにつれて、音はより重く、より暗く、より金属的になっていく。mid 90sのH8000は、vegan straight edge、self discipline、anti authoritarianismの緊張感がかなり強いsceneとして見られていた。外からは閉じたrule boundなsubcultureとして映ることもあったが、その内側にあったのは、だらしなさや依存を拒否し、自分たちなりの規律を作ろうとする感覚だった。Congressはその真ん中で、hardcoreの思想を保ったままextreme metalへ踏み込んでいった。

後年のJoshの発言も、この作品の位置づけを考える材料になる。再結成後のセットでは最初の四作が中心だと本人は話している。lineupが大きく崩れるのは2000年以降で、Stake Through The Heartはその変化の直前にある最後の古典期の一枚として見やすい。Blackened PersistenceやAngry With The Sunほど名前が先に出やすい作品ではないかもしれないが、Congressの初期から中期を閉じるうえで重要なアルバムであることは確かだ。Congressの流れを一本で見たとき、Chemical Breakdownは脇の曲ではなく、古典期の終わりに置かれた重い要石のように見えてくる。

Congressの存在感は、数枚の強いレコードを出したという話だけでは終わらない。Blackened Persistenceの時点で、彼らはH8000の基準を作るバンドとして受け止められていた。creativeで、より良くなろうとし、若い連中に影響を与えるバンドとしてsceneの標準を作ったというのがJosh自身の回想だ。後年になっても、Indonesia、Russia、Japanのような場所から影響を受けたという声が届くと話しており、Congressがローカルの短い現象で終わらず、その後のheavy hardcoreに長く影響を残したことがわかる。H8000という言葉がいまでも参照されるのは、Congressのようなバンドがそこにいたからだ。

Chemical Breakdownを取り上げる意味もそこにある。この曲をCongressで最も有名な曲だと断定する材料は、今回のファイル群だけでは足りない。けれど、Congressの思想とH8000の空気を一曲に濃く閉じ込めた曲としてはかなり重要だ。drug abuseやanti smokeを歌っていたバンドが、2000年の段階で薬、医者、制度、身体の崩壊をここまで露骨に結びつけていた。そこには初期straight edgeの延長線もあるし、それを越えて社会の側まで睨む視線もある。Chemical Breakdownには、Congressが持っていた嫌悪、倫理観、重さがまとまっている。

この曲からCongressを見ると、彼らが単なるvegan straight edge bandでも、単なるmetalcoreの先駆けでもなかったことが見えやすくなる。ベルギーのローカルsceneから出てきたバンドでありながら、hardcoreの思想をextreme metalの音にまで押し広げ、その中で薬物、喫煙、肉食、宗教、同調圧力、自己破壊をまとめて問い直していた。Chemical Breakdownは、その全体像に触れる入口としてかなり強い一曲だ。Congressが何を嫌い、何を拒み、どういう重さを目指していたのか。その輪郭は、この曲にかなり集中的に出ている。

CHEMICAL BREAKDOWN:

Fill your body’ with junk and filth, then cure it with expensive pills.

身体を不健康なものと粗悪なもので満たし、その後高い薬で治そうとする。

Abscesses impossible to be released, infected inside, pale face to hide

排出されることのない膿瘍、内側は感染し、隠そうとする青ざめた顔

Your health is a disaster, narcotics make your heart beat faster

おまえの健康は悲惨なもので、麻薬はおまえの心臓をより速く打たせる。

The doctor you call master

おまえが主と呼ぶ医者

Cancer-clusters, grown into your system, disease spreads like a fire

癌の塊が、おまえの体内に育ち、病気は火のように広がる。

My sweat is your medicine, my profit become your pills

俺の汗はおまえの薬であり、俺の利益はおまえの錠剤となる

A leech feeding on the wrists of society’s bliss

社会の幸福の手首に吸いつくヒル

Nicotine, caffeine and saturated fat, enjoy it while you can

ニコチン、カフェイン、飽和脂肪、楽しめるうちに楽しめ

No matter how bad you live your pathetic life, the state will pay all your bills

おまえがどれだけひどくその惨めな人生を生きても、国家がおまえの請求をすべて支払う。

A pill to make you numb, another to make you dumb

おまえを麻痺させるための薬がひとつ、もうひとつはおまえを愚かにするための薬

Once you’re down, you’ll never make it up

いったん落ちたら、おまえは二度とそこから上がれない

The threat above your head, finally you’ll end up dead. 

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p data-start=”1221″ data-end=”1314″>おまえの頭上にある脅威、結局おまえは死ぬことになる。