All Out War 7インチ全体について

Earth CrisisのAll Out Warは、タイトル曲だけを切り出して読むより、1992年の7インチ全体として見た方が事実に近い。いま確認できる範囲では、この作品はfold-out sleeve付きで出ていて、歌詞だけでなく補足本文を含むinsertが入っていた。外部の現物記述では、mission statementのinsertと、歌詞の追加説明insertがあったとされる。少なくとも、後年の現物記述、同時代の誌面、1996年の議論ログ、Karl本人の1996年発言は、All Out Warが歌詞だけで完結する作品ではなく、紙の本文まで含めて読まれる前提で出ていたことを一致して示している。

この7インチは、Karlが1995年に最初の7インチだと説明していて、1992年にConvictionから出て、その後Victoryから再発された。録音場所については、1992年6月のPenguin Studiosという外部記述があり、Karl自身も1996年に最初のAll Out War 7インチはPenguinで録ったと話している。1997年には、Karlが7インチやアルバムのタイトルは、その時点で最も重要な歌詞を持つ曲名から取ると話している。All Out Warという題が7インチ名になっている事実と、この命名基準は並べておける。ただし、Karlがタイトル曲All Out Warそのものを一曲単位で解説した発言は、現時点で確認できていない。

1989年から1992年までの前史

Shane Durgeeの証言では、1989年の時点でDJ RoseがEarth Crisisという名前のバンドをやっていて、SSDのカバーと少数のオリジナルを演奏していた。その時のKarlはベースだった。Shaneはその頃のDJとKarlをあとから知ることになり、1991年夏にDJとGuavと一緒に住み始めた時、自分はveganでOversightのシンガーだったと話している。OversightのあとにFrameworkへ移り、Frameworkはstyleとpoliticsの両方が自分のやりたいものに近かったとも言っている。

Karl本人の回想では、高校最終学年の頃には、歌詞、曲、ビートまで含めた曲を一人で書き始めていた。家の地下では演奏できて、庭にはランプがあり、punk、metal、hardcore、skatingの人間が集まる場所になっていた。最初期にはUticaのUpstateとのつながりがあり、Upstateのシンガーがギターを弾き、Karlはベースを弾き、Jesseがドラムを叩いた。DJ Roseは一時的にボーカルを試したが、Karlの歌詞を極端すぎると感じて離れた。Karlは、最初は誰もシンガーをやりたがらなかった、自分の歌詞は攻撃的で強引に見えると言われた、自分で歌ってベースも弾いた、と後年振り返っている。

Shaneが語る起点

Shaneの証言で最も重要なのは、Frameworkの練習場所だったScottの親の家の地下で、Ben ReadとShaneがHardlineのside projectを始め、その場で出てきたものが実質的にAll Out War 7インチだったという点だ。Shaneは、その時の動機を、人間中心の文化が暴力と残酷さの上に成り立っていることへのfrustration and angerだったと説明している。そこではSean Muttaqiへ送るdemoの意識もあった。まだ名前はなく、その後はKarlとBenが先へ進め、自分はFrameworkに集中した。Karlが前のバンド名を採ってEarth Crisisと名付けた時点で、それはもうHardline projectではなくなったとShaneは話している。

Shaneの記憶では、短期間Hardlineを名乗ったのはBenと自分だけだった。Earth CrisisそのものをそのままHardlineに固定するのは、自分の記憶とは違うと話している。さらに、自分は1993年ごろにはpro-choiceになっていたとも言っている。この点は、後年のEarth Crisisに向けられたhardline、homophobic、anti-choiceという決めつけと、その内部の実態が一致していなかったことを示す断片として残る。

Scottが語る成立過程

Scott Crouseの証言では、All Out War録音時点のEarth Crisisはside projectだった。KarlがBenに自分の曲を覚えてdemo録音を手伝ってほしいと頼み、Mike Riccardiも入り、最初はまだband nameすらなかった。Karlは以前、DJ Rose on vocalsのバンドでEarth Crisisという名前を使っていて、その名前を借りた。All Out War EPを録ってから、本気でこのバンドをやる流れになった。Scottの言い方では、FrameworkがKarlをボーカルにしてEarth Crisisになった。

Scottは、Earth Crisisが一度Hardline Recordsを考えたが、Hardlineはveganismとstraight edge以上に厳格で、同性愛嫌悪も議題に入っていたので、自分たちを表していないとしてvegan straight edgeの名で進んだと話している。GuavがAll Out War EPを出し、その後にデモを各レーベルへ送ったが、歌詞への反発を恐れられて断られたとも話している。歌詞の読み方については、ScottはKarlの初期歌詞を怒りの芸術的表現と捉えていて、全部を逐語通りに読むものではなかったと明言している。

初期歌詞がどう受け取られたか

初期Earth Crisisの歌詞が、最初から激しく受け取られていたことは複数の証言が重なる。KarlはNYHC Chroniclesで、初期には誰もシンガーをやりたがらず、自分の歌詞は攻撃的で強すぎると見られたと話している。HardLoreでは、All Out Warへの反応は驚きと恐怖だったと話している。理由として、骨組みが非常に旋律的で、心を高揚させるようだったのに対し、自分の歌詞はあのくらい攻撃的である必要があったと説明している。そこで死んだネズミやヨーグルトの話も出てくる。初期Earth Crisisが、最初からシーンの中で摩擦を起こしていたことはここではっきりしている。

Scottの別の説明では、Karlの初期歌詞は個人的な表現で、怒り、苛立ち、傷、失望という感情の表れだったとも言われている。ここでは、Shaneのもどかしさと怒り、Scottの怒りの芸術的表現、Karl自身の攻撃的である必要という三つの言い方が並ぶ。

地元Syracuseの状況

KarlがBig Truthで話している地元の事情は、All Out War期の歌詞を読むうえで外せない。SyracuseはOnondaga Lakeの岸にあり、その湖は長いあいだ北米でも最悪級に汚染された水域だった。周囲の工場が毒性の高い汚泥を流し込んでいて、後年の浄化作業も、本当に取り除いたのではなく、覆って封じ込めただけだとKarlは見ている。また、街の中には動物実験施設があり、その一つでは霊長類を使っていた。Karlはそれを見て、単に反対ではなく、本気で憎んでいたと話している。薬物や酒で周囲が壊れていく現実、JudgeやSlapshotに見ていた押し戻しの感覚もここに重なる。All Out War期のEarth Crisisは、こうした地元の現実の上に立っている。

1995年の時点でKarlが語っていたこと

Punk Planet 09では、KarlがAll Out Warを最初の7インチとして位置づけている。1992年にConvictionから出て、その後Victoryで再発されたという説明もここにある。band全体については、everyone is x-on-the-hand, vegan, straightedgeだと述べている。1995年時点で、Earth Crisisが自分たちをvegan straightedge bandとして出していたことは動かない。

Stand By用insertの全文

現時点で、全文を読める形で確認できている現物本文は、Stand Byに付いていたインサートだけだ。本文冒頭では、歌詞に出てくる胎児という語の使い方について、Stand Byの歌詞に対する説明だとはっきり書かれている。内容は次の通りだ。

罪のない命への敬意は、自分で身を守れない存在すべてに向けられるべきで、動物でも胎児でも同じでなければならない。生体解剖の実験室や食肉処理場にいる動物にはその権利を認めながら、成長している胎児には認めないのは一貫していない。人間にはその権利を認めながら、動物には認めないのと同じように一貫していない。罪のない命への敬意は、最も重いものとして扱われるべきだと書かれている。

強姦や近親相姦の場合には、母親に子どもを出産まで抱え続けることで、さらに精神的な苦痛を負わせるべきではないとも書かれている。その一方で、避妊の代わりとして中絶を用いることは誤りだとしている。

同時に、中絶を禁止する法律を支持することを必ずしも意味しないとも書かれている。より前向きで現実的な方法は教育だとし、年々低年齢化している避妊なしの性行為への教育、年長の人たちに互いを物のように扱わず敬意を持つことを教えること、望まない妊娠という状況に自分を置かないようにすることが必要だとしている。学校での十分な性教育と、無料のコンドーム配布を全面的に支持するとも明記されている。解決策は禁欲か一対一の関係だとし、予定していない妊娠が起きた場合には、少なくとも二人の親が支え合いながら、その子どもを養子に出すか、自分たちで育てることを考えるべきだとしている。最後は、胎児のために、思いやり、教育、個人の責任という方法で立ち向かう、という文で終わっている。

1993年の誌面と1996年の議論ログ

1993年のMaximum Rocknroll #124では、問題視された行として、for the fetus, for the cat, for the cow, for the rat, we will attackが誌面に残っている。同時に、the use of the word fetusを説明するinsertがrecordに入っていたと書かれている。つまり、fetusという語とその補足insertが、1993年時点で論争の中心だったことは同時代誌面で確認できる。

1996年の議論ログでは、All Out Warのinsertを読めというやり取りが残っている。そこでは、respect for innocent life must encompass all those who are unable to defend themselves, be it animals or unborn childrenという文や、We will attack with a strategy of compassion, education, and personal accountabilityという文がEarth Crisisのものとして引用されている。さらに、In cases of incest or rape, obviously the mother should not have to expose herself to the further emotional trauma of carrying the child full-term. という文がsleeveのsecond paragraphからの引用として残っている。これらは当時のscene内のやり取りであって、後から整えられた再録ではない。そのぶん、1996年時点で本当に何が争点だったかを示している。

同じ議論ログでは、the song isn’t even specifically related to abortion, it is about the killing of all animals, including humans, infant or otherwise という読みも残っている。ただし、これはband本人の正式説明ではなく、当時のscene内の読みだ。公式な注釈として固定はできない。

1996年のKarl本人の説明

1996年7月20日、ワシントンD.C.のCapital Ballroomで、Earth Crisis、Snapcase、Refused、Damnnation, A.D.の公演後に行われたGreg Svitilのインタビューでは、KarlがAll Out Warの文章についてかなり直接に話している。ここでKarlは、Earth Crisisはhardlineのバンドではなく、vegan straightedgeのバンドだとはっきり言っている。同性愛嫌悪でもないともはっきり言っている。

中絶については、強姦の場合、母体の身体的な安全が危険な場合、薬物、酒、たばこへの依存や事故や病気によって、生まれてくる子どもの人生が完全な苦しみになるような場合には、中絶という選択肢は残されるべきだと説明している。その一方で、自分たちは禁止を求めているのではなく、若い人たちへの性教育、家庭と学校の両方での教育、避妊を無料で手の届くものにすること、責任を持たせることを解決策として挙げている。胎児は人間の命だとも話している。

そしてKarlは、All Out Warに入っていた文章の中で、中絶の問題を止めるための解決策として書かれていることには、心から同意していて、死ぬ日までそう思い続ける、と話している。これは大きい。All Out War 7インチに付いていた文章の解決策を、1996年の時点でもKarl自身が自分の立場として持ち続けていたことになる。

同じインタビューでKarlは、Stand By、Behind the Mask、Forced to Killはもう演奏しないとも話している。理由は、音がpunk rockで、今のEarth Crisisの音がmetalcoreだからということと、Stand Byの歌詞はShane、曲はBenが書いていて、自分は自分で歌詞を書いた曲を歌いたいからだということだ。militant animal liberationやenvironmentalismの主題は、その後のThe Order That Shall Be、Destroy the Machines、The Wrath of Sanity、Deliveranceの方で、より正確に書き直したとも言っている。

同じ流れでKarlは、最初の7インチであるAll Out WarはPenguinで録音したと話し、さらにPath of Resistanceはstraight hardcoreの音で、All Out Warにもっと近く、All Out Warが本来そうあるべきだった音だとも話している。All Out WarからFirestorm、Destroy the Machines、Gomorrah’s Season Endsへ進むにつれて、音はより技巧的で、より細かく整えられていったという整理もある

1997年の命名基準

1997年のLollipop Magazineでは、Karlが7インチやアルバムのタイトルを、その時点で極めて重要な歌詞を持つ曲の名前から取ると説明している。All Out Warという7インチ名があり、その基準が語られている。ここまでは確認できる。ただし、Karlがタイトル曲All Out Warの歌詞を一曲単位で説明したわけではない。命名基準の存在と、All Out Warという題の存在が並ぶところまでだ。

2009年のKarlの言い方

2009年のAll Out War in New Yorkのインタビューでは、Karlが1989年にEarth Crisisを始めた理由について、Minor Threat、Youth of Today、7 Secondsのあとに弱くなっていたstraight edgeの火を消さずに残したかったからだと話している。薬物、酒、たばこ、乱れた性行為を、破壊的で、よくないもので、行き止まりで、中身のない一時的な楽しさだと見ていたとも話している。これはAll Out Warという曲そのものの話ではないが、Earth Crisisの最初の目的を、Karl自身が後年どう言い直したかを示すものとして残る。

ALL OUT WAR

This time I’m not going to walk away

今回は逃げたりしない

this time I’m not going to let you slide

今回は見逃さないぞ

I have to give you what you thirst for

おまえが望んでるものをくれてやる

it’s not for your good, It’s not for my pride

それはおまえのためじゃないし、俺の誇りのためでもない

evil lies beyond ignorance, aware of the truth, aware of the facts

悪は無知の先にあって、真実を認識し、事実を認識している

the strength to take the stand to stop the slaughter is what you lack

虐殺を止めるために立ち上がる強さが、おまえには欠けているんだ

the weakness you can’t control brings animals death and pain,

制御できない弱さが動物に死と苦痛をもたらし、

the struggle I fought to overcome

俺が乗り越えるために戦った葛藤

the dark pit where you…choose to remain

暗い奈落、そこはおまえが…留まることを選んだ

this time I’m not going to let you slide

今回は見逃さないぞ

I have to give you what you thirst for

おまえが望んでるものをくれてやる

it’s not for your good, it’s not for my pride

それはおまえのためじゃないし、俺の誇りのためでもない

keep on with your killing, your threats, and your jokes

殺し続けろ、脅し続けろ、冗談を言い続けろ

just brace yourself for what’s in store

これから起こることに覚悟を決めておけ

continue to flow with the close minded evil

偏狭な悪に流され続けろ

prepare for all out war! 

全面戦争に備えろ! 

a dose of the hate your kind fills me with everyday

おまえらみたいな連中が毎日俺に抱かせる憎しみの一発分だ

you’re entitled to your own freedom, not to take others’ away

おまえは自分の自由を持つ権利があるが、他人の自由を奪う権利はない

all out war!

全面戦争だ!