
Earth Crisis は最初から、清潔感のあるユースクルー型のストレートエッジ・バンドではなかった。Scott Crouse は、自分たちは metal と hip hop 側から来ていて、当時のストレートエッジの見た目や空気に乗れなかったと振り返っている。Karl Buechner は、以前に Earth Crisis という名の別編成を動かしていたあと、ヴィーガンでストレートエッジの面々だった Framework 側に声をかけ、曲を持ち込み、手を入れ、数本のライブを経て全員がそちらに集中した。Firestorm は、その体制が固まった初期段階の作品だった。
Firestorm EP のクレジットには、Karl Buechner、Benjamin Read、Scott Crouse、Dennis Merrick、Ian Edwards の名が並び、録音日は 1993年6月14日から16日、エンジニアは Bill Korecky、共同プロデュースは Earth Crisis と Bill Korecky と記されている。収録曲は Firestorm、Forged In The Flames、Unseen Holocaust だった。裏表紙写真は John Cannon、小さな裏写真は Justin Moulder、ロゴは Guav A. で、連絡先は North Syracuse の住所になっている。
Scott Crouse の回顧では、Firestorm は最初から発売を前提に録られていた。バンドが本腰を入れたあと、8曲か9曲入りのデモを作り、各所に送った。その冒頭に入っていた Taxi Driver のサンプルは New Age には受け入れられず、Mike Hartsfield は曲やバンド自体は気に入りながら、その空気だけは引っかかったという。逆に Tony Brummel はそこを気に入り、そのままで行けと返した。Victory から Firestorm が出た流れには、その最初の反応の差がそのまま入っている。
録音現場についても Scott Crouse は具体的に話している。Bill Korecky のスタジオは、外から見るとかなり荒れた建物で、一部は焼けたような状態だったという。さらに Ian Edwards はまだ高校生で、録音には行けなかった。Scott の説明では、Ian は Firestorm EP でベースを弾いておらず、その時期に代役で入っていた別の人物も録音には参加していない。作品のクレジットに Ian の名はあるが、現場の実務はそれより入り組んでいた。
Firestorm の主題については、Karl Buechner が 1996年7月の Aaron Burgess とのインタビューでかなり直接に説明している。Karl は、薬物使用者は被害者であり、この曲が向いているのは売人だとはっきり話している。売人は地域の混乱をさらに悪化させ、自分の利益を優先し、その土地に起きている被害を知りながら広げている側だという説明だった。Firestorm の出発点は、Karl の甥がいた Syracuse 北側の地域で、6年ほどのあいだに犯罪、強盗、無差別の暴力が増え、自宅や交際相手の家にも侵入未遂が起きていた現実にあった。
同じインタビューで Karl は、化学薬品系の薬物が地域をさらに崩していると話し、Firestorm を売人を撃つ歌だという理解もそのまま認めている。さらに、その歌を聴いた人間が自分で動いたらどう思うかと問われ、達成だと答えている。Karl は Syracuse の Animal Defense League への資金援助や、ALF の移動資金への寄付にも触れ、1995年の Syracuse では全米でも目立つ規模の直接行動が起きていたと話している。その流れで、Black Panther Party、Sea Shepherd、Earth First!、ALF の名も挙げ、自分たちはバンドとして大勢に届く場にいる以上、その行動を賛美し、知らせる役目を持つという考えも口にしている。
Firestorm が Scott Cody についての曲だという点も、この曲の輪郭を決める材料として外せない。2000年6月の Lexi による Broken Silence zine のインタビューで、Karl は Firestorm は Scott Cody についての曲、Ultramilitance は Rod Coronado についての曲だと明言している。同じ整理では、Earth Crisis の歌詞が大手報道では扱われにくい人物や出来事を記録する方向を持っていたことも押さえられている。Firestorm は、街の荒廃を素材にしただけの曲ではなく、特定の人物に結びついた曲でもあった。
この曲を Earth Crisis 全体の中に置くと、位置はさらにはっきりする。1998年1月の Brad Oates による Hecker #5 のインタビューでは、Earth Crisis が扱うものとして、動物解放、環境問題、人種の連帯、男女の平等、反薬物が並び、それらは一つの闘いとして語られている。Earth Crisis は 1993年の結成以来、Syracuse から日本まで、メタリックなハードコアと強い主張で知られるようになり、All Out War、Firestorm、Destroy The Machines、Gomorrah’s Season Ends を Victory から出してきた。Karl は同じ時期、報道の広がりによって Bulgaria や Guam から連絡が来たこと、主流メディアに出ても譲らなければ届くこと、歌詞は人の弱さを映し、動かすためのものだと話している。
1999年12月の XMixleplik による First のインタビューでは、Karl は新しい曲で初期の発声感覚に戻しつつ、語り、絶叫、旋律を混ぜていると説明している。狙いは、歌詞カードを開かなくても言葉が届く状態だった。読み取れる発声にして、もっと早く、もっと強く伝えたいという発想だった。Earth Crisis は攻撃的な音楽を保ったまま、できるだけ広い場所に主張を届けようとしていた。前年作についても、環境破壊の曲や動物解放の直接行動を扱った曲、盤を外した場所に入れた長文のヴィーガン文などが語られており、主張を作品の外側まで含めて出す姿勢が続いていた。CNN、48 Hours、ABC News、MTV、ブラジルのテレビ出演についても、Karl は概ね公平だったと受け止めている。
音の作りでも Firestorm には固有の事情がある。Scott Crouse は、自分たちの曲は速さより重さとうねりを重視していて、Dennis Merrick は John Bonham のように叩いていたと話している。Firestorm もデモとは違う感触にするため、意図的に遅くしてうねりを強くした。Unseen Holocaust や後の Gomorrah’s Season Ends の曲には、Dennis のドラム発想から出たものもあるという。Scott は別の箇所で、Firestorm は意図的に単純で基本形に寄せた曲だと話している。反対側では、それだけで Earth Crisis を単純な刻みだけのバンドとして片づける反応もあり、バンド側は演奏力を示そうとして次の曲群を組み立てていった。
Firestorm をめぐる反発は、曲そのものだけでは終わらなかった。Scott Crouse は、当時 Earth Crisis のシャツを着ること自体が立場表明であり、人によっては挑発そのものだったと話している。シャツには屠殺場の写真が入り、名前だけで十分に攻撃的に受け取られる空気があった。さらに、バンドに向けられた噂の多くは、反中絶や好戦的なストレートエッジという誤解と結びつきながら膨らんだ。Scott の説明では、Earth Crisis のライブで起きた物理的な揉め事の大半は、外から仕掛けられたもので、ヨーグルトやビール缶が飛ぶことも珍しくなかった。バンド側は公に反応せず、次の街ではその話題自体を消すようにしていた。Firestorm をきっかけに Earth Crisis を嫌った者もいれば、その街にいた Earth Crisis 好きの誰かに対する反発が、そのままバンド本体に返ってきたこともあった。Scott は、Firestorm が大量の模倣を生み、その粗い模倣まで含めて Earth Crisis が批判を引き受ける形になったとも話している。
Firestorm のあと、Earth Crisis はすぐ次へ進んだ。Scott Crouse によれば、Firestorm で回ったアメリカ・ツアーはたぶん1本だけで、実質は夏のツアーだった。バンドは毎年1枚作るつもりで動き、ライブより曲作りと録音に重心を置いていた。Firestorm 前の8曲入りデモのいくつかは Destroy The Machines に引き継がれた。Dennis Merrick はその時期も大学を続けており、Destroy The Machines の曲作りが始まるころには Zimbabwe に行っていた。その間、Corey という若いドラマーが補助に入り、North Syracuse 周辺の若い演奏者の輪から次の人材も出てきている。
後年の Scott Crouse は、Firestorm を懐かしい曲として振り返っている。日常的に聴き返すわけではないが、Firestorm には Earth Crisis の識別点が詰まっているとも話している。Wrath of Sanity から Firestorm につながるライブ盤の流れを特に好んでおり、ライブでは長いあいだ Firestorm を待つ観客が残っていたとも語っている。Firestorm の図柄を含む再発シャツの反応が予想とずれたこと、90年代型の重いハードコアを求める若い層がそこに集まっていることも Scott は口にしている。Firestorm は初期 Earth Crisis を決めた曲であるだけでなく、後年の受け取られ方まで含めて Earth Crisis の象徴であり続けている。
FIRESTORM
STREET BY STREET.
通りごとに。
BLOCK BY BLOCK- TAKING IT ALL BACK.
ロックごとに―すべてを取り戻す。
THE YOUTH IMMERSED IN POISON TURN THE TIDE COUNTERATTACK.
毒にまみれた若者たちが形勢を逆転させて反撃に出る。
VIOLENCE AGAINST VIOLENCE LET THE ROUNDUPS BEGIN,
暴力には暴力で応じよ、一斉検挙の始まりだ、
A FIRESTORM TO PURIFY THE BANE THAT SOCIETY DROWNS IN.
社会が溺れかかっている災いを浄化するための炎の嵐。
NO MERCY NO EXCEPTIONS,
容赦なし、例外なし、
A DECLARATION OF TOTAL WAR- THE INNOCENTS DEFENSE,
全面戦争の宣言―無辜の民たちの防衛、
THE REASON IT’S WAGED FOR.
その戦いが繰り広げられる理由。
CHORUS
BORN ADDICTED,
生まれながらの依存症、
BEATEN AND NEGLECTED- FAMILIES TORN APART,
暴行と放置―引き裂かれた家族、
DESTROYED AND ABANDONED.
破壊され、放棄された。
CHILDREN SELL THEIR BODIES,
子供たちが身体を売っている、
FROM THEIR HIGH THEY FALL TO DROWN- DEMONS CRAZED BY GREED CUT BYSTANDERS DOWN.
高みから転落し溺れ死んでいく―貪欲に狂った悪魔たちが傍観者たちを次々と切り伏せる。
A CHEMICALLY TAINTED WELFARE GENERATION.
化学物質に汚染された福祉世代。
ABSOLUTE COMPLETE MORAL DEGENERATION.
完全なる道徳的堕落。
CHORUS
CORRUPT POLITICIANS, CORRUPT ENFORCEMENT.
腐敗した政治家、腐敗した法執行機関。
DRUG LORDS AND DEALERS ALL MUST FALL.
麻薬王も売人も、すべて倒さなければならない。
THE HELPLESS ARE CRYING OUT.
助けを求める人々が叫んでいる。
WE HAVE RISEN TO THEIR CALL A FIRESTORM TO PURIFY. (X7) … PURIFY.
俺たちは彼らの呼びかけに応え浄化のための炎の嵐となった。…浄化しろ。





