Envisionとは何者か|イタリアのミリタント・エッジ、ヴィーガニズム、H8000周辺との接点

Envisionは、90年代末ヨーロッパの militant edge metal を語るうえで見落とせないイタリアのバンドだ。パルマで結成され、1999年にはベルギーのレーベルから 『The Season of Indifference』 を発表した。音は metallic hardcore。思想面では straight edge を土台にしながら、ヴィーガニズムやアニマルライツに踏み込んでいる。歌詞では、罪なき者への残虐、動物への流血、報い、抵抗、自然の秩序といった主題が繰り返し現れる。

このバンドの重要さは、単に「イタリアの edge metal の一例」で終わらないところにある。Envisionは、90年代後半のヨーロッパで広がった、重く、暗く、倫理性の強い hardcore を、イタリアから具体的な作品として残したバンドだった。

結成と『The Season of Indifference』

確認できる範囲では、Envisionは1998年に結成された。

その後、4曲入りデモを制作し、翌1999年に 『The Season of Indifference』 を発表している。この作品は当時 Next Sentence Recordings からリリースされ、2025年には KNIVES OUT Records が再発した。再発盤には、本編に加えてデモ音源も収録されている。

ここで分かるのは、Envisionがイタリア国内だけで閉じたバンドではなかったということだ。作品がベルギーのレーベルから出ている以上、当時のEnvisionはヨーロッパの hardcore / metalcore の流通と価値観の中に入っていたと見るべきだ。

音の立ち位置|edge metal、fury edge、militant hardcore

Envisionの音は、現在の言い方では metallic hardcore に入る。

ただし、当時の文脈に近い言い方をするなら、edge metalfury edgemilitant hardcore といった呼び方のほうが実態に近い。再発元のBandcampでも、作品には straight edge / edge metal / fury edge / vegan / metallic hardcore といったタグが付けられている。

このバンドは、軽快さや疾走感を前面に出す straight edge ではない。重く、硬く、暗い。そこにあるのは、90年代後半の dark metallic hardcore に通じる緊張感だ。紹介文の中には Morning Again を引き合いに出すものもあるが、それは単なる音の近さだけでなく、倫理と攻撃性が結びついた感触も含んでいる。

メンバーについて

公開データベースで確認できる名前としては、Alle / Cristian / Fabio / Nicola Bussoni / Serio がある。

ただし、今回確認できた範囲では、それぞれの担当パートや、その後の活動までは一次情報で固めきれなかった。ここは広げすぎず、現時点で確認できる名前としてこの5人を挙げるにとどめるのが妥当だ。

straight edge だけでは終わらない思想

Envisionを straight edge バンドとしてだけ捉えると、このバンドの中心を外す。

たしかに straight edge は土台にある。だが、歌詞を読むと、そこで強く押し出されているのは禁欲そのものではない。何に対して怒り、何に対して報いを求めているのかが前に出ている。

その対象は明確だ。

罪なき者に対する残虐。動物に対する流血。堕落した世界。そうしたものに対して、報い、抵抗、正義、秩序という言葉が置かれている。Envisionの歌詞は、抽象的な反抗ではなく、敵と被害、暴力と報復の関係をはっきり描く。

特に「Force of Resistance」では、その姿勢がよく表れている。

この曲には “for the bloodshed against any animal” という一節がある。動物への流血が、報いの理由として直接示されている。また “we fight in the name of natural order” という表現も使われている。Envisionは、怒りを単なる感情としてではなく、倫理の問題として扱っている。

ヴィーガニズムとアニマルライツとの関係

Envisionとヴィーガニズム、アニマルライツの結びつきは強い。

その根拠は複数ある。

まず、再発元Bandcampのタグに vegan が含まれている。

次に、回顧的な記事では、Envisionは veggie/vegan straight edge の文脈で語られ、社会運動や動物の権利団体への支持にも触れられている。回顧記事は一次資料ではないため補助的に扱うべきだが、少なくとも歌詞の内容とは一致している。

そして最も重要なのは、歌詞そのものだ。

Envisionは動物を比喩として使っているのではない。動物への流血を、そのまま問題として書いている。ここから見えてくるのは、animal rights がイメージや装飾ではなく、このバンドの主題のひとつだったということだ。

そのため、Envisionは単なる straight edge バンドというより、militant vegan straight edge に接続するバンド と位置づけるほうが実態に近い。

H8000とのつながり

Envisionをそのまま H8000バンド と呼ぶのは正確ではない。

H8000はベルギー西フランダース周辺のシーンを指す言葉であり、Envisionはイタリア・パルマのバンドだからだ。地理的には別の位置にある。

ただし、思想や音の面では、H8000周辺のヨーロッパhardcoreと重なる部分が多い。H8000は、単なる地域名ではなく、政治性、straight edge、vegetarianism、veganismが重なった流れとして語られてきた。Envisionもまた、edge metal 的な音を持ち、straight edge を土台にしながら、歌詞では動物や罪なき者への暴力を主題にしている。

加えて、1999年作はベルギーの Next Sentence Recordings からリリースされている。

この点も踏まえると、Envisionは 地理的にはH8000の外側にいるが、思想・音・流通の面ではその周辺圏と接続していたバンド と整理するのがもっとも正確だ。

Envisionをどう位置づけるべきか

Envisionは、90年代末ヨーロッパの militant edge metal をイタリア側から具体的な作品として残したバンドだ。

1998年に結成され、1999年にベルギーから作品を発表した。音は metallic hardcore。思想は straight edge にとどまらず、vegan / animal rights の要素を含んでいる。歌詞では、罪なき者への残虐、動物への流血、報い、抵抗、自然の秩序が繰り返し扱われる。

このバンドをH8000そのものと呼ぶ必要はない。

ただ、H8000が広げた edge metal と militant vegan straight edge の感覚を、イタリアで作品として残したバンドだとは言える。

Envisionの輪郭はそこにはっきり出ている。

重さや攻撃性だけではない。何に怒り、何を守ろうとしているのかが、音にも歌詞にも表れている。その点でEnvisionは、90年代末ヨーロッパの hardline / militant edge 周辺を考えるうえで、見過ごせない存在だ。

force of resistance

a crusade for the blood of brothers

兄弟たちの血の為の聖戦

a crusade for all friends dead

死んだすべての友の為の聖戦

a crusade against all enemies

あらゆる敵に対する聖戦

a crusade for our steel pride

我らの鋼の誇りの為の聖戦

all slaves are free my soul is reinforced

すべての奴隷は自由だ、俺の魂は強化された

extinction is your future disinfect the world 

絶滅はおまえの未来だ、世界を消毒しろ

this is the retribution

これが報いだ

for your cruelty against any innocent

あらゆる罪なき者に対するおまえの残酷さへの

this is the retribution

これが報いだ

for the bloodshed against any animal

あらゆる動物に対する流血への

only the truth guides my hand

真実だけが俺の手を導く

eye for an eye ready to fight

目には目を、戦う用意はできている

I conquer these desolate lands

俺はこの荒れ果てた地を征服する

with the ancient fire of vengeance

復讐の古き炎をもって

I conquer this degradation

俺はこの堕落を克服する

with the force of resistance

抵抗の力をもって

an armour of certainty protects my mind

確信の鎧が俺の心を守る

battle after battle

戦闘に次ぐ戦闘

we inflict a punishment with the fist of justice

俺たちは正義の拳をもって罰を与える

battle after battle

戦闘に次ぐ戦闘

we fight in the name of natural order

俺たちは自然の秩序の名のもとに戦う

no weapon scrapes my heart

いかなる武器も俺の心を傷つけない

no cloud hides my clear sun

いかなる雲も俺の澄んだ太陽を隠さない

no lie obscures my conviction

いかなる嘘も俺の信念を曇らせない

I walk armed through the forest of sin

俺は武装して罪の森を歩く

battle after battle

戦闘に次ぐ戦闘

we inflict a punishment with the fist of justice

俺たちは正義の拳をもって罰を与える

battle after battle

戦闘に次ぐ戦闘

we fight in the name of natural order 

俺たちは自然の秩序の名のもとに戦う