Guttural Slug の Hacksaw Surgery を読んでまず残るのは、血まみれの派手さよりも、身体が順番に処理されていく感覚だ。

顔面に刃を押し当てる場面から始まり、喉、歯、腹へと視点が移り、最後には悪臭と吐瀉物まで持ち込まれる。この歌詞は一撃で終わる暴力を書いていない。身体の部位を一つずつ壊し、汚し、使い捨てていく流れそのものを見せることで、読み手の頭に嫌な景色を長く残していく。

この曲の気味悪さを強めているのが、医療や処置を連想させる語感だ。

amateur facial surgery assault、dental mutilation、home-made liposuction といった言い回しには、手術、矯正、整形の匂いがある。ところが Hacksaw Surgery の中でそれらは治療に向かわない。刃を押し込み、歯を引き抜き、腹を裂いて脂肪を引きずり出すための言葉として使われる。治すはずの語感が壊すための語感へ反転しているから、この曲にはスプラッター映画の乱暴さに加えて、もっと冷たく人工的な嫌悪感が生まれている。

細かい英語表現も、その不快さをかなり支えている。

rev it up や spinning tool から立ち上がるのは、金属工具が勢いよく回転しながら肉を削っていくイメージだ。器具としてどこまで正確かより、切断の速度と機械的な暴力が即座に浮かぶことのほうが大事にされている。lifeless body も、単なる無気力な体というより、生気が抜け、物のように扱われる肉の塊として読んだほうがしっくりくる。さらに home-made liposuction には、美容医療の響きをわざと混ぜる悪趣味さがある。きれいに整えるはずの言葉を、汚く壊す場面へねじ込むことで、この曲は余計に嫌な手触りを獲得している。

終盤の chunder も見逃せない。

ここは吐瀉物と訳して意味は通るものの、語感としてはもっと下卑ていて、ただ吐いたというより、汚物をぶちまける感触が強い。血や肉片だけなら極端なホラー表現として受け流せる余地もあるが、臭いに耐えきれず吐く場面まで入ると、景色は一気に生理的嫌悪の側へ沈む。Hacksaw Surgery が強いのは、切断の痛みだけでなく、壊れた身体のまわりに漂う臭い、ぬめり、汚れまで一緒に描いてしまうからだ。

この異様な手触りは、Megalodon というアルバムの成立事情を重ねるとさらに輪郭がはっきりする。

現時点で、この曲だけをメンバー本人が細かく解説した発言は確認できていない。ただ、後年のインタビューでは、Guttural Slug は長いあいだインターネット上のバンドとして存在し、創設者の Mikkel が中心になって動かしていたこと、Megalodon は Mikkel が書いた作品で、Devourment から強い影響を受けていたこと、しかも当時の Mikkel はまだ14歳か15歳ほどで、bedroom recording 的な感覚のなかで作っていたことが語られている。そうした背景を知ると、Hacksaw Surgery にある剥き出しの乱暴さは、雑さというより初期衝動そのものとして見えてくる。

Jack Christensen の証言で興味深いのは、Megalodon 再発へ動き出すまで、当の Mikkel 自身がそのアルバムのカルト的人気の大きさを十分に把握していなかったという点だ。

後から神格化を狙って作られた作品ではなく、若い作り手が old school slam の重さと下品さに夢中になり、そのまま形にした作品が、時間を経てシーンの中で特別な存在になっていった。その流れを踏まえると、Hacksaw Surgery に漂う押しつけがましい暴力性も、狙いすました演出というより、Megalodon 期のGuttural Slugをそのまま代表する質感として受け取れる。

後の作品との対比も、この曲の位置を見やすくしてくれる。

Plague of Filth については、よりモダンで、より明瞭で、デスコア寄りに感じる部分があったと後年に語られている。その一方で、現行インタビューでは新作をより Megalodon 的なアプローチへ寄せる方針まで口にされている。つまり、Megalodon の感触は過去の名盤として保存されているだけではなく、今も Guttural Slug らしさを測る基準点として機能している。その中心に Hacksaw Surgery のような曲があるのは自然だ。顔面破壊、歯の損壊、喉への刃、腹の切開、腐臭、吐瀉物。これだけ下品で露骨な要素を短い曲の中へ一気に詰め込みながら、きちんと曲として印象を残してしまうところに、この曲の代表曲らしさがある。

Hacksaw Surgery を読むとき、ただ過激な歌詞だと片づけるだけでは、この曲の本当の面白さは見えにくい。

本当に効いているのは、身体の各部位を順に壊していく構成、手術語彙を暴力へ引きずり込む言葉のねじれ、そして10代の Mikkel が old school slam の衝動をほとんど濾過せず作品に閉じ込めていた時代の空気だ。だからこの曲は、ゴア表現の見本として記憶されているだけではない。Guttural Slug の初期衝動、その乱暴さ、悪趣味さ、鈍重な重さが、もっとも分かりやすく露出した一曲として残り続けている。

Hacksaw Surgery

Blood, sprays out of your face

血が、おまえの顔から噴き出す

As I press the spinning metal blade against your skin

回転する金属の刃をおまえの肌に押し当てるとき

Amateur facial surgery assault

素人顔面外科手術級の暴行

Deconstructing your face, ripping- tearing- slitting- slicing

おまえの顔を解体して、引き裂き、剥ぎ取り、切り込んで、切り刻む

I cut you into pieces

俺はおまえをズタズタに切り刻む

I wield my hacksaw and rev it up

俺は弓のこを手に取りエンジンを吹かす

I approach your lifeless body

俺はおまえの無気力な体に近づく

Shove the spinning tool down to your gut

回転工具を腹の底まで押し込む

Intestines flies everywhere as I laugh hysterically

腸が飛び散る最中、俺は狂ったように笑う

I take the saw and press it against your throat slashing, gashing, bashing, gushing

ノコギリを手に取りおまえの喉に押し当てて切り裂き、裂け目を作り、叩き潰し、血が噴き出す

Your start to bleed, with no control

おまえは制御不能に血を流し始める

I pick you up, strap you to a chair

おまえを拾い上げ、椅子に縛り付ける

Then I begin to pull out your teeth

それから俺はおまえの歯を引き抜き始める

 

Dental mutilation, blood gushes out of your gums, dripping on to your shirt, the white fabric stains red from the blood spill

歯の損傷、歯茎から血が噴き出し、シャツに滴り落ちる。白い布地が血の飛沫で赤く染まる

I take my knife and cut you open, home-made liposuction. 

ナイフを手に取りおまえの腹を切り裂く、手作り脂肪吸引だ。

I slit the fat inside you and tear it out

おまえの内臓の脂肪を切り裂き引きずり出す

The putrid stench of you, fills the room.

おまえの腐ったような悪臭が、部屋中に充満している。

The aroma of your carcass is all too much, I puke into you and fill you up with chunder

おまえの死骸の臭いは耐え難い、吐瀉物をぶちまけておまえを満たす