INFANT ANNIHILATOR - The Palpable Leprosy Of Pollution [CD] - RETRIBUTION NETWORK DISTRO

Infant Annihilatorの I. Infant Annihilator は、残虐な単語を並べて聴き手を驚かせるだけの曲として片づけると、この曲がやっていることの核心を取りこぼしやすい。ここで描かれているのは、教皇を頂点とした宗教権力が、自分たちの正体を守るために救済そのものを先回りして殺そうとする、反転した宗教劇である。語り手は被害者でも告発者でもない。制度の中心にいる教皇自身が命令を下し、幼子キリストの再臨を恐れ、幼児と妊婦の虐殺を進めようとする。その構図によって、この曲は流血の量で押す歌ではなく、宗教的象徴をどこまで倒錯させられるかを試す歌として立ち上がる。

歌詞の中で本当に重要なのは、腐敗した権力が何を恐れているかだ。予言が成就すれば、自分たちは神の代理人ではなく、ローブをまとった変質者にすぎないと露見する。だからこそ教皇は、再臨そのものを潰しにかかる。本来なら救済の中心にあるはずの幼子イエスを、制度の側が先に十字架へ送り込もうとすることで、この曲はキリスト教の物語を逆回転させる。ここにあるのは単純な信仰否定ではない。神の名を利用して地位を守る側の自己保身を、最大級に誇張して見せる視点である。読みどころは残酷表現の過激さではなく、救済神話の反転のさせ方にある。

この読み方が有効なのは、Infant Annihilatorというバンド自体が、最初から過剰さを方法論としていたからでもある。Aaron Kitcherは、2012年に新しい音楽ソフトを試すために始めたこのバンドで、可能な限り最も馬鹿らしくて強烈な音楽を作ることしか考えていなかったと語っている。バンド名や曲名も、音楽と同じくらい完璧にぶっ飛んだものにしたかったとも明かしている。さらに後年の発言では、2作目で描いた宗教カルトの支配者と子供への残虐行為のテーマは、1作目から続いているものだとも説明している。つまり、I. Infant Annihilator に出てくる教皇、幼子、預言、聖職者、虐殺という要素は、その場限りの悪趣味ではなく、デビュー作の時点からアルバム全体を支える世界観の核として置かれていたと見てよい。

もう一つ大きいのは、1stアルバムの歌詞を書いていたのがDan Watsonだった点である。Aaronは、最初のアルバムではDanが全部書いていたと振り返っている。Dan本人も、Infant Annihilatorはもともと気楽なネット企画として参加したもので、最初は遊び感覚で声を乗せただけだったと話している。ところが反応が大きくなり、そのままフルアルバムへ進み、仕事の昼休みに家へ戻って録音を重ねる形で完成まで持っていった。さらに、12月12日の発売日が決まってから後半をかなり急いで仕上げたこと、当時は録音やプロダクション面で自分でも未熟さを感じていたことまで明かしている。だからこの曲は、後から理屈を整えて作られたというより、最初からやりすぎるつもりで作られた世界観が、短期間の勢いと粗さを抱えたまま噴き出した曲として読む方が実態に近い。

その前提で歌詞へ戻ると、I. Infant Annihilator の異常さはさらに立体的になる。ここで語っているのは、外部から教会を糾弾する声ではない。制度の頂点にいる加害者が、自分の口で命令を下し、自分の地位を守るために救済を殺そうとする声である。そのため、この曲は単に過激なだけの導入では終わらない。被害者の悲鳴から始めるのではなく、加害者の宣言から始めることで、The Palpable Leprosy of Pollution という作品全体の救いのなさを、最初の段階で固定してしまう役割を担っている。アルバムの入口にこの曲が置かれている意味は大きい。世界観の説明を後から足すのではなく、最初の一撃で作品全体の倫理の崩壊を宣言しているからだ。

だからこの記事で本当に拾うべきなのは、残酷表現の刺激そのものではない。教皇を語り手にしたこと、再臨の物語を逆向きにしたこと、宗教権力の腐敗を制度の内側の声として描いたこと、そしてその世界観がDanの歌詞とAaronたちの極端な方法論によって、短期間に一気に形になったことだ。I. Infant Annihilator は、過激だから話題になった曲ではなく、腐敗した権威が自分たちの偽装を守るために神話を先回りして潰そうとする、その倒錯した発想をアルバム冒頭でむき出しに提示した曲として読むと、初めて本当の輪郭が見えてくる。

I. Infant Annihilator 

You have been gathered here to kill every child under two; every pregnant mother too.
おまえたちは二歳未満の子供を皆殺しにするためここに集められた;妊娠中の母親も例外ではない。
We will stop the second coming of Christ.
我々はキリストの再臨を阻止する。
I the Pope bow to no one – yet alone bow to God.
私は教皇として誰にも頭を下げない―ましてや神に頭を下げたりはしない。
I will slaughter everyone before I risk the power vested in me.
私に与えられた力を危険に晒す前に、私は全員を虐殺するだろう。
Assemble the legions of priests and vow to me that every infant will die.
司祭の軍団を召集し、すべての幼子を死なせることを私に誓え。
Promise to me that Christ will hang; nailed to a cross before he’s three.
キリストが三歳になる前に十字架に釘付けにされることを、私に誓ってくれ。
Arise and become an ordained clergy of plague,
立ち上がり疫病神の聖職者となる定め、
all sweeping across the world to cleanse.
浄化のため世界中に駆け巡る。
Crucify the children in the streets for all the world to see.
子供たちを街中で十字架にかけ、全世界に見せしめとする。
The prophecies cannot be fulfilled.
予言は成就しない。
If they are we will be exposed for what we have truly become: Perverts draped in robes claiming to be embodiments of God.
もしそうなら、我々は真の姿を見透かされるだろう:神の実体と称するローブをまとった変質者だと。
Kill him before we are exposed.
我々が露見する前に彼を殺せ。
Erase him so no one knows what we have become.
彼を消し去れ、そうすれば誰も我々が何になったかを知らない。
Now bring me the head of the infant Jesus Christ impaled on my sword, so that I may mount it on my wall.
さあ、我が剣に刺し貫かれた幼子イエス・キリストの首を我に差し出せ、そうすれば壁に掲げて飾れるのだ。
I will rule forever. Bring me the head of the infant Jesus Christ.
永遠に支配する。幼子イエス・キリストの首を差し出せ。