We Roamは、山の上の静かな場所へ逃げていく気分をゆるく歌った曲としてだけ受け取ると、本質を取りこぼしやすい。2021年1月20日に投下されたこの曲は、4月20日に控えていた25 To Life前の最後の新曲として告知されており、投稿文でもD-Locは、この狂った時代の中で子どもたちを思いながら書いた曲だと説明している。混乱から少し離れ、いい空気を吸い、顔に日差しを感じ、雑音のない時間を味わいたいという言葉まで添えられていることを踏まえると、山、落ち葉、草、静かな空間といったこの曲の風景は、ただ心地よい自然描写として置かれているのではない。社会の空気がそれだけ息苦しかったからこそ、こうした景色が切実な避難先として立ち上がっている。
その時代の重さは、歌詞の内容にかなりはっきり残っている。世界が吹き飛びそうだという感覚、増え続ける死者、腐った国、破産していく人々、膝をついた経済、毎日のニュースに追い立てられる生活。こうした言葉は、漠然とした不安の演出として処理するより、パンデミック下の現実をそのまま引き受けた表現として読む方が自然だ。実際、アップロードされた資料にも、2021年1月20日時点の全米COVID死者数が累計39万6837人、新規死者数が4409人だったデータが入っている。too many deaths や a broke economy that’s down on the knees というラインは、単なる大げさな言い回しではなく、当時の生活実感と強く結びついた言葉として響いてくる。
そして、この曲をコロナ禍の歌として決定的にしているのが、masked up と they’ll never see my face という感覚である。マスクは感染対策として必要だった一方で、人の顔の見え方まで変えてしまった。表情は半分隠れ、互いの距離感はぎこちなくなり、外の世界は毎日のニュースと数字によってさらに重たく感じられる。We Roamがただの放浪の歌に聞こえないのは、この顔が見えない日常の息苦しさが、歌詞の奥にずっと残っているからだ。家にいれば安全なのか、外に出れば何が起きるのか、どこへ向かえば少しは落ち着けるのか。その不安が強いからこそ、この曲のどこへ行くのかという問いも、場所探しの言葉ではなく、壊れかけた日常の中で自分を保てる場所を探す問いとして聞こえてくる。
ただし、We Roamの大事なところは、不安や逃避だけで終わらない点にある。投稿文では、子どもたちが自分を生き生きさせ、導き、教えたい存在だと語られている。さらにTell All InterviewでもD-Locは、娘たちを育てたい、そばにいたい、子どもたちの良い手本でいたい、リーダーでありたいと話している。こうした本人発言を踏まえると、歌詞の中の raising my kids、set a good example for the youth、a leader not a follower は、その場しのぎのポジティブな言葉ではない。死者数の増加、経済不安、マスク越しの生活で心が削られる時代の中でも、子どもたちや若い世代の前でどう立つのかを考えた結果として置かれている言葉であることが見えてくる。
その意味でWe Roamは、パンデミック期の閉塞を記録した曲であると同時に、その閉塞の中でどう生きるかを考えた曲でもある。表面だけ追えば、煙と草と山の上の景色をまとった穏やかな一曲に聞こえるかもしれない。けれど、その奥では、増え続ける死者、傷んだ経済、ニュースに追い立てられる毎日、顔の見えない生活、そして子どもたちに何を見せるのかという責任感がひとつに重なっている。そうした背景まで押さえて歌詞を読むと、We Roamは単なる逃避の歌ではなく、壊れそうな時代の中でも自分の態度と足場を失わずにいたいという願いを歌った曲として、はっきり立ち上がってくる。
We Roam
Where, where, where, do we
どこ、どこ、どこ、俺たちは
Where, where, where, do we go?
どこ、どこ、どこ、俺たち行くのか?
Do we go?
俺たち行くのか?
When the world’s bout to blow, where do you go?
世界が崩壊しようとしている時、君はどこへ行く?
When the world’s bout to blow, where do you go?
世界が崩壊しようとしている時、君はどこへ行く?
When the world’s bout to blow, where do you go?
世界が崩壊しようとしている時、君はどこへ行く?
When the world’s bout to blow, where do you go?
世界が崩壊しようとしている時、君はどこへ行く?
We wanna drift away to a better place
俺たちはもっと良い場所へ漂っていきたい
Nice quiet space on a mountain top
山頂にある素敵な静かな空間
Where the leaves fall, smoke green, grass, we roam
葉が散る場所、煙る緑、草、俺たちは彷徨う
We wanna get away, we won’t leave a trace
俺たちは逃げ出したいんだ、 痕跡を残さずに
They’ll never see my face, we just getting lost
彼らは決して俺の顔を見ることはなく、俺たちはただ迷い続けるだけだ
Not high life, we roam, we roam
贅沢な生活じゃない、俺たちは彷徨う、彷徨う
When we’re masked up, I guess our time is up
マスクを着けたら、どうやら俺たちの時間は終わりだ
Too many deaths and now we see the numbers up
死者が多すぎるのに、今また数字が増えている
The whole country corrupt
国全体が腐敗している
People going bankrupt, this sucks
破産する人々、これは最悪だ
Living masked up, raising my kids
マスクをしたまま生活し、子供を育てる
Look at dad like I’m nuts, sucks
パパをまるで頭おかしいみたいに眺める、最悪だ
You gotta live the best of every moment
すべての瞬間を大切に生きなきゃな
Don’t talk about it, be about it, you gotta own it
口にするな、行動で示せ、それを自分のものにしろ
A leader not a follower, you gotta show it
指導者であって支持者ではない、おまえはそれを示さなきゃ
Set a good example for the youth, be a positive poet
若者の善き手本となり、前向きな詩人であれ
KMK for life, plant a seed and grow it
生涯コットンマウスキングス、種を蒔いて育てよう
You got one life to live, don’t abuse it, blow it
おまえの人生は一度きり、無駄にしたり台無しにしたりするな
Where, where, where, do we
どこ、どこ、どこ、俺たちは
Where, where, where, do we go?
どこ、どこ、どこ、俺たち行くのか?
Do we go?
俺たち行くのか?
We wanna drift away to a better place
俺たちはもっと良い場所へ漂っていきたい
Nice quiet space on a mountain top
山頂にある素敵な静かな空間
Where the leaves fall, smoke green, grass, we roam
葉が散る場所、煙る緑、草、俺たちは彷徨う
We wanna get away, we won’t leave a trace
俺たちは逃げ出したいんだ、 痕跡を残さずに
They’ll never see my face, we just getting lost
彼らは決して俺の顔を見ることはなく、俺たちはただ迷い続けるだけだ
Not high life, we roam, we roam
贅沢な生活じゃない、俺たちは彷徨う、彷徨う
Now when the world’s ‘bout to blow, where do you go?
世界が今にも爆発しそうになった時、君はどこへ行く?
Where you gonna hide? Are you safe at home?
どこに隠れるつもり?家にいれば安全か?
Living in a black hole, depressed and low
真っ暗闇の中で生きていて、落ち込んで元気がない
We see the daily news, so be careful where you roam
日々のニュースを見ればわかる、だから行動には気をつけろ
Is the crimes on TV a brand new disease?
テレビ上の犯罪はまったく新しい病気なのか?
They need to cure the country, always gonna bleed
彼らは国を救わなければならないが、いつも血を流す
Fix the state, that’s the reality
状態を修正しろ、それが現実的だ
A broke economy that’s down on the knees
ひざまずいて破綻した経済
The people beggin’ please, looking for a way
人々は必死に懇願して、方法を探している
Seeking out the truth to live another day
真実を求めて、また一日を生き延びる
No hard times, I’m feeling fine
キツイ時なんてない、気分は上々だ
Take away the rain and most sunshine
雨とほとんどの日差しを奪ってしまう
Cleanse your soul, your body and your mind
君の魂、身体と心を清めろ
Take away the pain from the daily grind
日々の苦労から痛みを和らげる
Positive vibes, there’s only one way
前向きな気持ち、それしか方法はない
And so I say, and so I say
だから俺は言う、だから俺は言うんだ



