
LIARのNew Born Fireは、1997年作 Invictus の1曲目だ。歌詞はHans、音楽はJosh。歌詞カードの説明文には、ハードコア・ムーブメントへの信念を守り、商業主義に屈せず、MTVや大手雑誌に出る偽物の連中を信じない人たちに捧げるとある。地元のシーンと、その中の誠実で忠実で支え続けた人たちに捧げるとも書かれている。
この曲の地元のシーンは、ベルギー西フランダース地方のハードコア・シーンだ。H8000という呼び名は、西フランダース地方の郵便番号圏を土台にしたものだ。LIARはその西フランダース地方コルトレイク出身のバンドだ。Rise Above、Wheel of Progress、Congress、LIARにつながる流れも、この地域を中心に育っている。New Born Fireは、そのH8000の中から出てきた曲だ。
曲の説明文に並ぶ語ははっきりしている。商業主義。MTV。大手雑誌。偽物の連中。地元のシーン。忠実で支え続けた人たち。New Born Fireは最初から、誰に向けた曲か、何を切る曲かを明記している。勇ましい言葉だけを並べた曲ではない。シーンの内と外を区切る文が先に置かれている。
Hansの発言を重ねると、この曲の向きはさらに見やすくなる。Hansは、ハードコアに惹かれた理由として、回りくどさのなさや曲間の話を挙げている。音だけの話ではない。言葉と態度まで含めて受け取っていたことが分かる。Hansは自分を同調しない人間だとも話している。何かが一つの型に固まっていくことへの反発も出ている。歌詞カードの説明文にある商業主義批判や偽物への拒否は、この価値観の中にある。
Hansは、LIARの通底するものとして、社会批判、反宗教、ヴィーガニズムを挙げている。Invictusの後も、そのメッセージは続いていたという流れがある。New Born Fireは、シーンに向けた一曲である前に、LIAR全体の思想の入口にある曲だ。商業主義批判だけを切り出すと狭くなる。社会批判、反宗教、ヴィーガンでストレートエッジな確信、その延長線上にこの曲がある。
この曲の短さと直接さにも意味がある。Hansは、歌詞だけ抜くと単純に見えることがあっても、ライブで何百人も一緒に歌うと強さが変わるという話をしている。New Born Fireの短い言い回し、強い断定、繰り返しやすい形は、会場で集団が声にする形と重なる。文章として飾るための作りより、ライブで機能する作りが前に出ている。
歌詞カードの説明文にある地元のシーンと支え続けた人たちも、周辺証言を合わせると具体的になる。Hansの話には、同じ流れで回る会場や人間関係、寝袋、舞台裏が出てくる。別の証言には、酒場、レーベル、宣伝、意匠、印刷といった仕事が出てくる。Tシャツを刷る人、フライヤーを作る人、音源を回す人、企画を組む人、記録を残す人がいた。New Born Fireが捧げている相手は、こうした実務と記録の共同体まで含んでいる。
物の回路も、この曲の背景にある。H8000側の証言には、Tシャツ、パッチ、ジン、テープ交換、小さな店、見つけにくい音源の流通が出てくる。大型量販店で買うのではなく、自分で探し、自分で作り、自分たちの回路で回す感覚がある。店にないから自分で刷る。許可を取って少量だけ作る。そういう動きまで出てくる。大手雑誌やMTVへの拒否は、雑誌とテレビだけの話ではない。どこで何を知り、どこで何を買い、誰と何を交換するかまで含んでいる。
このシーンには、自分で学ぶ仕組みもあった。MDCの打ち込み説明文を読み、政治的な考え方や共産主義やストレートエッジを知る。DVDや雑誌や広告や文通やテープ交換を通して意味を学ぶ。LIARの歌詞に説明文が付くやり方は、この環境の中にある。New Born Fireの説明文は補足ではない。歌詞の読み方を先に示す形として機能している。
別のH8000証言には、ストレートエッジは自分のための選択であり、ヴィーガニズムは動物のためのものだという区別が出ている。決まりが多すぎてハードコアから離れていく人の話も出ている。規律という言葉が、この時代の空気の中で使われていたことが分かる。New Born Fireの中の規律と確信も、その空気の中に置ける。
H8000側の別の証言には、高額なTシャツや見せかけだけの格好への反発も出ている。見た目だけで所属を買うような感覚への嫌悪がある。新しいヴィーガンの流行を、記号だけのものとして見る話も出てくる。商業主義批判は、売れることだけへの反発ではない。見た目だけで中身を作ったことにする感覚への反発まで含んでいる。
暗い語彙や戦闘的な語彙も、この曲では浮いていない。H8000周辺の証言には、Venom、Slayer、King Diamond、ブラックメタル、戦闘的な見た目や語彙が何度も出てくる。同時に、Hansは人を驚かせる見た目や記号と、露骨に差別的な記号を同じには扱っていない。型にはまることを嫌い、見せかけだけの格好も嫌う。New Born Fireの火、血、剣、帝国は、その文脈で置くと意味が通る。ハードコアの軸を持ったまま、もっと暗くてもっと硬い語彙を取り込んだ曲だ。
西フランダース地方の小さな流れから始まり、祭りや地下のつながりを通じて外へ広がっていく感覚も、この曲の背景にある。歌詞カードに地元のシーンへの献辞があり、同時に火のイメージが置かれていることも、この広がりの中で読むと収まりがいい。小さな場所から燃え始めたものが、会場の流れを通って広がっていく。New Born Fireには、その火種の感覚がある。
NEW BORN FIRE
Legions of immortality
不死の軍団
ready to drink your blood
おまえの血を飲む準備はできている
set your world on fire
おまえの世界に火を放つ
a blaze of victory
勝利の炎を
on your ruins of weakness
おまえの弱さの廃墟の上に
powers of discipline
規律の力
the empire is settled
帝国は盤石となった
colored with the blood
血で染まった
of a new hope
新たなる希望の
bound together
一緒に結びつけられた
with the chains
鎖に繋がれた
of true conviction
真の確信の
your cruelty praised
おまえの残酷さが称賛される
our swords are raised
我らの剣は掲げられる
new born fire
新生の炎
rise and shine
立ち上がれ、そして輝け
(lyrics:Hans; music:Josh)
Expl.:Dedicated to all those who kept their faith in
the hardcore-movement and didn’t gave in on commercialism
and do not believe in the so-called
pseudo be acts on MTV and major glossy shit
magazines. Dedicated to our local scene and the
true, loyal and supportive individuals in it…
説明:ハードコア・ムーブメントへの信念を貫き、
商業主義に屈せず、
そして、MTVや大手グロス雑誌に溢れる
いわゆる偽物のバンドを信じない
全ての人々に捧ぐ。
地元のシーンと、
そこにいる誠実で忠実な支援者たちに捧ぐ…






