No Zodiac「Population Control」は何の曲なのか

No Zodiacの「Population Control」は、人口問題を論じる曲ではない。

この曲で突きつけられているのは、腐敗した社会への不信と、その社会を作っている人間そのものへの嫌悪だ。

歌詞の冒頭から出てくるのは、憎悪と嘘で精神を汚し、権力欲で心を腐らせ、弱い人間の魂まで踏みにじる人類の姿だ。ここで使われる「Population Control」という言葉も、政策論の用語として響いているわけではない。人類なんて多すぎる、価値がない、だから減らせ。そういう乱暴なスローガンとして置かれている。

この曲では、世界が壊れているという話より先に、人間がすでに壊れているという感覚が前に出ている。そこが、この曲のいちばん大きい特徴だ。

“social cannibalism” という言葉に、この曲の中心が出ている

この曲の中でいちばん重要なのは “social cannibalism” という言葉だ。

社会的な共食い。かなり強い表現だが、曲全体の内容をよく表している。

歌詞では、人は生き残るために争わされる。争わなければ沈む。勝たなければ食われる。ところが、その争いには出口がない。生き延びるために戦っても、誰も生きて抜け出せない。この感覚が、この曲の土台にある。

ここで描かれているのは、単純な勝者と敗者の話ではない。全員が同じ腐った構造の中にいて、その中で削り合わされている状態だ。曲の怒りが特定の制度批判だけに向かわず、人間全体へ広がっているように見えるのも、そのためだと読める。

“On your knees” にあるのは、反抗を失った人間への嫌悪

もうひとつ、この曲の軸になっているのが “On your knees is how they want you to live and die” という一節だ。

跪いたまま生き、跪いたまま死ぬ。それが望まれている姿だと、この曲は言う。

その前後には、愚かで、疲れ果て、従順で、現状に甘んじたままという言葉が並ぶ。ここで出ているのは、単なる敗北ではない。鈍らされ、疲弊させられ、反抗を失った人間の姿だ。

この曲は、そうした状態に追い込む側への怒りだけで終わっていない。そこに従わされている人間そのものも含めて、全体を嫌悪しているように見える。“we lost every ounce of humanity” まで含めて読むと、この曲の中心にあるのは、人間性そのものがすり減っていく感覚だと分かる。

『Population Control』はNo Zodiacの初期単独作として見ていい

この曲が入っている『Population Control』は、No Zodiacの最初期を代表する単独リリースだ。

媒体によって表記には少しぶれがあり、アルバム扱いもあれば、内容のまとまりからEP的に受け取られることもある。ただ、少なくともNo Zodiacの初期像がまとまって出ている作品として押さえていい。

曲数は8曲で、タイトル曲のほかにも “Drowning”“Black Death”“Non Existent” など、のちのNo Zodiacにつながる不穏さがすでに並んでいる。初期作というだけではなく、この時点でバンドの空気がかなりはっきり出ている作品だ。

初期No Zodiacはストレートエッジ・ビートダウンとして見られていた

『Population Control』期のNo Zodiacは、少なくとも外からはストレートエッジ・ビートダウンとして見られていた。

この作品はSeventh Daggerから出ており、当時の流通でもSxEビートダウン/ハードコアとして紹介されていた形跡がある。初期No Zodiacにその札が付いていたこと自体は不自然ではない。

Seventh Daggerの存在も、この見られ方を補強している。

このレーベルはストレートエッジ・ハードコアの文脈で受け取られていたレーベル/ブランドで、初期No Zodiacがその周辺にいたことは、当時の受け取られ方を考えるうえで無視できない。

ここで大事なのは、初期の見られ方としてはそのラベルで間違っていない、ということだ。

問題は、その肩書きだけで曲の中身まで説明できるかどうかだ。

この曲の中身は、初期の肩書きだけでは読み切れない

「Population Control」の歌詞そのものを読むと、中心にあるのは禁欲の倫理そのものではない。

前に出ているのは、人間嫌悪、社会的共食い、支配、服従、破滅の感覚だ。正しい生き方を示すというより、人間そのものがすでに腐敗しているという認識のほうが強い。

そのため、この曲をハードラインやヴィーガン・ストレートエッジの歌としてそのまま読むのは難しい。近い空気を感じる人がいるのは分かるが、少なくとも歌詞の中心は、動物解放や禁欲の純化ではなく、人間全体への見切りにある。

つまり、『Population Control』期のNo Zodiacは、初期の見られ方としてはストレートエッジ・ビートダウンの文脈に置かれていた。

一方で、この曲そのものは、その肩書きだけでは読み切れない。ここに、初期No Zodiacの面白さと整理しにくさの両方がある。

2015年の本人発言でも、No Zodiacはまだシカゴのバンドとして話している

アップされたTIHC 2015のインタビューを見ると、この時点でNo Zodiacは自分たちを「Chicago, Illinois」のバンドとして紹介している。

同時に、その年の初めに『Eternal Misery』を出したこと、PhoenixのNo Altarsとツアーしていたことも語っている。

ここで重要なのは、2015年時点ではまだシカゴのバンドとして自己紹介している点だ。

後年はフェニックス文脈で語られることが増えるが、その移行は突然ではなく、途中段階があったことが分かる。

このインタビューでは、当時のメンバーとして Chris、Jeff、Eric、Grubby、Conor の名前もまとまって出てくる。

つまりNo Zodiacは、初期から後年にかけて拠点も編成も少しずつ変わっていったバンドとして見たほうが実態に近い。

初期メンバーを見ると、バンドの輪郭が少し見えやすくなる

初期No Zodiacの核になっていたのは、Gerardo Pavon、Daniel Bond、Chris “Grubby” Cole、Erik Bartowの4人だ。

その後の時期を含めると、Burn In Hell期にはVince Robert、Population Control期にはMike Pelekoudasの名前もクレジットに出てくる。

この中で、公開情報だけを見て初期コアメンバー本人のストレートエッジ実践まで裏づけるのは難しい。少なくとも今確認できる範囲では、Gerardo、Daniel、Chris、Erikの4人それぞれについて、本人の明確なSxE宣言まで押さえられるわけではない。

ただ、バンド全体は初期にSxEビートダウンとして流通し、Seventh Dagger文脈に置かれていた。

そのため、初期No Zodiacをめぐる空気そのものは、ストレートエッジ周辺と確かに接していたと見ていい。

Curtis Leporeの関与は、初期No ZodiacとSxE周辺の接点を補強する

この時期のNo Zodiacを考えるうえで、Curtis Leporeの存在は無視しにくい。

CurtisはNo Zodiacの正式初期メンバーではないが、『Population Control』期にゲスト参加している。しかもCurtisは、GhostxShipのボーカルとして知られた人物で、自身でもストレートエッジかつヴィーガンであることを明言していた。

Straight Edge Worldwideの記事では、GhostxShip離脱後のCurtisが、新しいNo Zodiacのレコードにゲスト参加すると書かれている。

この一点だけでも、初期No ZodiacがSxE周辺の人物と接点を持っていたことはかなりはっきりする。

もちろん、Curtisが関わったからNo Zodiacそのものの思想の核までストレートエッジだった、とまでは言えない。

ただ、初期No ZodiacがSeventh Dagger文脈にあり、SxE / veganの人物が作品に関与していたという事実は、初期の見られ方を補強する材料としてかなり強い。

No Zodiacは、初期の時点ですでに単純なハードコア・バンドではなかった

No Zodiacは2009年にシカゴで始まり、初期はビートダウン/ハードコア文脈で見られていた。

一方で、後年の流れを見ると、バンドは早い段階から単純なハードコアだけでは収まらない方向へ進んでいたことが分かる。

2015年の時点で『Eternal Misery』を出し、2017年の『Altars of Impurity』に進むころには、扱われ方もかなりデスメタル/デスコア寄りに傾いていく。『Altars of Impurity』のレビューでも、No Zodiacはミザンスロピーと暴力を主題にしつつ、より伝統的なデスメタルやブラックメタルの要素を加えた重いバンドとして受け取られている。

この流れを見ると、No Zodiacはあとから急に別物になったというより、初期の時点ですでに単純なハードコアには収まっていなかったと考えるほうが自然だ。

「Population Control」は、その初期の段階でその違和感がはっきり出ている。

復帰後の発言まで見ると、自己破壊や耽溺の方向がさらに露骨になる

復帰後の紹介文では、No Zodiacはフェニックスのブルータル・ハードコアの重鎮として扱われ、1126 Recordsから2曲入り7インチを出す流れが紹介されている。

その中でRolo Hernandezは “Self Inflicted” について、薬物乱用とその結果についての曲だと説明している。

この発言は、「Population Control」当時の歌詞をそのまま説明するものではない。

ただ、初期から見えていた人間の崩壊、自己破壊、倫理の摩耗の感覚が、後年にはもっと露骨な言葉で語られるようになったことは見えてくる。

初期No Zodiacを理解するうえで重要なのは、後年の発言をそのまま初期へ逆輸入しないことだ。

そのうえで、初期から後年まで貫かれている暗さや不潔さの方向は、かなり一貫している。

「Population Control」は、初期No Zodiacの見られ方と実際の中身のズレが一番よく出ている

この曲が重要なのは、初期No Zodiacの見られ方と実際の中身のズレが、一曲の中でかなり分かりやすく出ているからだ。

表向きには、SxEビートダウンの文脈に置かれている。

レーベルもその文脈に近い。

作品にはCurtis LeporeのようなSxE / vegan人物も関わっている。

その時期の流通や空気まで含めれば、初期No Zodiacをストレートエッジ・ビートダウンとして見るのは自然だ。

ただ、歌詞の中では、人間全体への嫌悪、共食いのような社会、跪かされたまま生きて死ぬしかない感覚、人間性の摩耗が前に出ている。

この時点で、No Zodiacはすでに初期の肩書きだけでは収まらないバンドになっている。

No Zodiacを理解するなら、このズレを消さないほうがいい。

初期のラベルは事実として押さえる。

そのうえで、「Population Control」の中身はそのラベルだけでは説明しきれない。

この二つを並べて見たほうが、初期No Zodiacの実像に近づける。

Population Control

All of humanity has gone to shit; we pollute our weak minds with hatred and lies

人類全体が腐り果てた。我々は弱い精神を憎悪と嘘で汚している

Rape the souls of innocent and weak men.

無垢で弱い人間たちの魂まで踏みにじる。

Our lust for power has corroded our hearts.

権力への欲望は心を蝕んだ。

Forced into social cannibalism, we fight to survive but none gets out alive.

社会的な共食いへと追い込まれ、生き残るために争うが誰一人生きて抜け出せない。

Dumb, tired, submissive and complacent that’s how they want you to live and die.

愚かで、疲れ果て、従順で現状に甘んじたまま、それが彼らの望む生き方であり死に方だ。

On your knees is how they want you to live and die.

跪くことこそが、彼らが望む生き方であり、それが彼らの望む姿だ。

On your knees is how they want you to live and die, we lost every ounce of humanity.

跪いたまま生き、跪いたまま死ぬ、それが彼らの望む姿で、俺たちは人間性をことごとく失った。

Driven by a self-righteous, morality we need to suffer and pay for our crimes.

正義面した道徳に駆られ、俺たちは自らの罪のために苦しみ償わねばならない。

We need to suffer and pay for out crimes.

我々は苦しんで罪の代償を払う必要がある。

Forced into social cannibalism, we fight to survive but none gets out alive.

社会的な共食いへと追い込まれ、生き残るために争うが誰も生きて抜け出せない。

Dumb, tired, submissive and complacent that’s how they want you to live and die

愚かで、疲れ果て、従順で現状に甘んじたまま、それが彼らの望む生き方であり死に方だ

Seven million people, seven million too fucking many.

700万人、700万もクソほど多すぎる。

All out of excuses and lies, the blindfold must come off it’s time to face the hang man

言い訳も嘘ももう尽きた、目隠しは外さなければならない、絞首刑執行人と向き合う時だ

Humanity has gone to shit population control; humanity is worth shit, population control. 

人類は腐りきった、人口削減だ;人類はクソほどの価値もない、人口削減だ。