
ONE OK ROCK の Fight the Night は、歌詞だけを追うと、痛みを抱えたまま前へ進もうとする曲に見える。
雨が降り、傷跡は消えず、戦いには代償がある。それでも another day を見るまで戦い続ける。その言葉だけでも曲の輪郭はつかめるが、この曲の強さは、歌詞の意味だけで完結しない。Fight the Night は、35xxxv というアルバムの最後に置かれたことで、はじめて本来の重さを持つ曲でもある。
35xxxv は、ONE OK ROCK がそれまで以上に外の世界へ意識を向けて作った作品だった。
Taka 自身も、この時期について、ここまで日本の空気を吸わずに曲を作ったのは初めてだったと振り返っている。日本の中だけで完結する感覚から少し距離を取り、もっと多くの国に向けて音楽を鳴らしたい。その変化は、アルバムのサウンドにも言葉にもそのまま出ている。Fight the Night は、その転換点の最後に置かれた曲として、ただ静かに締めるだけの役目を負っていたわけではない。
この曲の制作意図を考えるうえで特に大きいのが、Taka が Jude Cole との共作について話している部分だ。
Taka は Fight the Night を、Lifehouse のようなテイストをアルバムの中に入れたかった流れの中で生まれた曲として語っている。制作の途中では作り方の違いからぶつかることもあったが、最終的にはうまくまとまり、この曲はバンドサウンドの延長というより、アルバムを締めくくる壮大なサウンドを目指していたと説明している。ここはかなり重要だ。Fight the Night は、偶然ラストに置かれた曲ではなく、35xxxv の終点を担う曲として意識的に作られていたと分かるからだ。
さらに海外向けの英語インタビューまで重ねると、この曲の置かれ方がもっと見えやすくなる。
Taka は 35xxxv について、あきらめずに夢を追い続けることがアルバムの大きなメッセージだと話している。加えて、海外のリスナーに届く必要があったから音はより American になり、英語を増やして世界へ開いていきたかったとも説明している。Fight the Night 単曲を直接語った発言ではないが、この曲がなぜあれほど広がりのある英語詞で、アルバムの最後に置かれているのかを考えるうえではかなり大きい。35xxxv の最後に必要だったのは、閉じるための曲というより、外へ向かうための余韻を残す曲だったのだと思う。
そう考えると、歌詞の中の war や scars の響き方も変わる。
この曲を文字通りの戦争の歌として読むより、何かを守るために傷つき、時間を費やし、簡単には癒えない痛みを抱えた状態全体を表す言葉として読んだほうが自然だ。So many scars never fade には、過去の傷がもう消えないことが正面から書かれているし、This is the price of war には、前へ進むまでにすでに何かを失ってきた感覚がある。しかも、その代償は money や victory ではなく、paid with time と続く。時間そのものを払ってきたという言い方が入ることで、この曲は単なる勇ましい戦いの歌ではなくなる。Fight the Night が抱えているのは、勝ち負けよりも、失ったものの重さだ。
Fight the night というタイトルも、その方向をはっきり示している。
ここで戦っている相手は、目の前の敵とは限らない。night という言葉には、不安、喪失、迷い、出口の見えない時間そのものが重なっている。歌詞にも your fears という言葉が出てくるので、この曲の fight は、何かを倒して終わる戦いというより、自分の中に膨らんでいく恐れに押しつぶされないための戦いとして響く。その意味で、Fight till your fears, they go away はかなり重要な一節だ。外の敵を消す歌ではなく、内側にある恐れが薄れていくまで持ちこたえる歌として、この曲の芯がよく出ている。
The light is gone and we know once more という一節も見逃せない。
光が消えたあとに知るものが何なのか、歌詞は詳しく説明しない。けれど、その曖昧さがかえって効いている。希望があるから進むのではなく、いったん光が消えたことを知ったうえで、それでも another day を見るまで進む。ここにあるのは、明るさに支えられた前向きさではない。むしろ、光が消える感覚を知ってしまった人間が、それでも朝を待つしかないという、かなり苦い意志だと思う。だから The sun will rise once again が効く。劇的な救済ではなく、朝がまた来ることだけを信じる。この控えめさが、Fight the Night を必要以上に大げさな曲にしていない。
この曲の面白さは、アルバムでは最後に置かれているのに、ライブでは始まりの曲にもなったことではっきりする。
35xxxv JAPAN TOUR の映像作品では Fight the Night が1曲目に置かれている。アルバムでは終点、ライブでは開幕。この置き方は偶然ではなく、この曲が終わりと始まりの両方を担える性質を持っていたからだろう。35xxxv の最後で鳴るとき、この曲は新しい段階へ進むための余韻になる。ライブの最初で鳴るときは、その余韻がそのまま出発の合図になる。Fight the Night がただのラスト曲で終わらないのは、この二重性があるからだ。
Fight fight till there’s nothing left to say という反復も、この曲の役割をよく表している。
もう語る言葉が残っていなくても、なお進む。その感覚は、答えが見つかった人間の歌より、答えがないまま立っている人間の歌に近い。Fight till we see another day にしても、勝利の到来を待っているのではなく、とにかく次の日を見るところまでたどり着くことが目標になっている。ここが、この曲の誠実さだと思う。消えない scars があり、light も gone している。それでも目標は壮大な成功ではなく、another day にたどり着くこと。その小ささが、逆にこの曲を強くしている。
35xxxv 全体を振り返ると、Fight the Night が最後に置かれた意味はかなり大きい。
このアルバムは、ONE OK ROCK が外へ向かう意志をはっきり音にした作品だった。日本の空気だけで作られた作品ではなく、海外の制作環境、英語詞、海外の聴き手を意識したサウンドがそのまま入っている。そんな作品の最後に置かれた Fight the Night は、前へ進むための景気のいい宣言ではなく、不安も痛みも残っている状態を認めたうえで、それでも朝を待つ曲として響く。世界へ広がることへの高揚だけで終わらず、その裏にある恐れや痛みまで置いて終わるからこそ、35xxxv のラストとして強い。
Fight the Night を和訳だけで読むと、傷つきながら戦う歌という理解で止まりやすい。
けれど、Taka がこの曲を Jude Cole と作った、アルバムを締める壮大な曲として語っていること、35xxxv 自体が世界へ向かう転換点の作品だったこと、さらにその終曲がライブでは始まりにもなったことまで重ねると、この曲の見え方はかなり変わる。Fight the Night は、戦いを称える歌ではない。恐れが消えなくても、傷が消えなくても、次の日へ進むことをやめないための歌として強い。そしてそれは、当時の ONE OK ROCK 自身が置かれていた場所とも、そのまま重なって見える。
Fight the Night
Here comes the rain
雨が降ってくる
So many scars never fade
多くの傷跡は決して消えない
This is the price of war
これは戦いの代償である
And we’ve paid with time
そして俺たちは時間をかけて支払ってきた
We’ll fight fight till there’s nothing left to say
もう何も言えなくなるまで戦い続ける
(Whatever it takes)
(何が何でも)
We’ll fight fight till your fears, they go away
あなたの不安が消えるまで戦い続ければ、奴らは遠ざかる
The light is gone and we know once more
光は消え、俺たちは再び知ることになる
We’ll fight fight till we see another day
俺たちは違う日常を見るまで戦い続けるつもりだ
Let’s move along, it’s late
先を急ごう、もう遅いから
The sun will rise once again
陽はまた昇る
This field is lined with the brave
この領域には勇敢な者たちが並んでいる
Souls in relief
救済される魂たち
We’ll fight fight till there’s nothing left to say
もう何も言えなくなるまで戦い続けるつもりだ
(Whatever it takes)
(何が何でも)
Fight fight till your fears, they go away
あなたの不安が消えるまで戦い続ければ、奴らは遠ざかる
The light is gone and we know once more
光は消え、俺たちは再び知ることになる
We’ll fight fight till we see another day, another day
俺たちは違う日常を見るまで戦い続けるつもりだ、違う日常を
Whatever it takes
何が何でも
Whatever it takes
何が何でも
Here comes the rain
雨が降ってくる
So many scars never fade
多くの傷跡は決して消えない
This is the price of war
これは戦いの代償である
And we’ve paid with time
そして、俺たちは時間をかけて支払ってきた
We’ll fight fight till there’s nothing left to say
もう何も言えなくなるまで 戦い続ける
(Whatever it takes)
(何が何でも)
Fight fight till your fears, they go away
あなたの不安が消えるまで戦い続ければ、奴らは遠ざかる
The light is gone and we know once more
光は消え、俺たちは再び知ることになる
We’ll fight fight till we see another day
俺たちは違う日常を見るまで戦い続けるつもりだ
We’ll fight fight till we see another day
俺たちは違う日常を見るまで戦い続けるつもりだ
We’ll fight fight till we see another day
俺たちは違う日常を見るまで戦い続けるつもりだ
ソングライター: Jude Anthony Cole / Takahiro Moriuchi
