
SSQのTonight (We’ll Make Love Until We Die) は、妖しいラブソングとして受け止めるだけだと、この曲の芯まで届きにくい。もともとは1983年のPlaybackに入っていた曲だが、1985年の映画『バタリアン』と結びついたことで、80年代ホラーの記憶に深く食い込んだ一曲になった。のちにStacey Q名義でTwo of Heartsを大ヒットさせるStacey Swainを中心にしたSSQの音には、冷たさ、湿り気、けばけばしさ、退廃が同時にある。その感触が、『バタリアン』の墓地、死体、パンク、悪趣味な笑い、エロスの混ざった画面と驚くほどよく噛み合っている。
『バタリアン』そのものも、普通のゾンビ映画として説明すると足りない。医療倉庫から漏れたトライオキシンによって死者が蘇り、脳みそを求めるバタリアンたちが町へあふれ出すホラーコメディで、パンクな若者たち、墓地、死体安置所、ブラックユーモア、スプラッターが最初から一体になっている。しかもこの映画のアンデッドは、頭を撃てば終わるような従来型の怪物とは感触が違う。しぶとく動き、言葉を発し、痛みまで抱えた存在として描かれるから、笑えるのに後味が妙に重い。
その異様さを決定づけるのが、日本ではオバンバの名で親しまれてきた、上半身だけの女ゾンビの場面だ。死体解剖台に縛りつけられた彼女は、なぜ脳みそを食べるのかと問われて、死んでいること自体が痛いからだと答える。あの痛みの訴えが入ることで、この映画のゾンビ像は一気に変わる。脳みそを食べるのは残酷さの演出のためだけではなく、死んでいる苦痛を少しでも和らげたいからだという説明が与えられるため、バタリアンは滑稽な怪物で終わらず、腐敗しながら苦しみ続ける存在として記憶に残る。
そのうえでTonightがもっとも強く結びつくのが、Linnea Quigley演じるトラッシュの墓場の場面である。トラッシュは墓地で、いちばん最悪な死に方として、薄汚い年寄りどもに囲まれて生きたまま食われることを口にする。そしてその直後、彼女は服を脱ぎ、墓石の上で踊り始める。この場面は『バタリアン』を代表する光景として今も語られ続けているが、本当にうまいのは、あの台詞が後できっちり回収されるところにある。逃げ遅れたトラッシュは墓場のバタリアンたちに襲われ、食われ、今度は狩る側として蘇る。だからあの踊りは単なる話題作りの裸シーンではない。若さ、挑発、死、欲望、破滅が一本の線でつながる、この映画の構造そのものを先に見せる場面になっている。
ここにTonight (We’ll Make Love Until We Die) の歌詞を重ねると、この曲の見え方はかなり変わる。暗闇の中で相手を見つけ、死者のあいだで踊り、血の匂いを追い、悪魔と寝たことすら大した刺激ではなかったと語り、最後には死ぬまで愛し合おうと繰り返す。この語り手は、恐怖に追われる被害者の位置にはいない。恐怖、血、死、官能を自分から抱え込み、その危うさごと快楽へ変えていく側に立っている。老いる前に出血死したい、生ける屍として病的な愛を分かち合いたいという感覚も同じで、ここで歌われる love には救済よりも破滅の匂いが濃い。だからこの曲は、普通のラブソングとして聴くより、ホラー映画の文法で愛と死をねじり合わせた歌として読んだ方が深く入ってくる。
さらに重要なのは、この結びつきがファンの連想だけで終わっていないことだ。2023年のStacey Q本人インタビューでは、彼女は『Return Of The Living Dead』のアニバーサリー企画で音楽面のスポークスパーソンを務めたこと、その関係で映像やイベントにも関わったことを振り返り、かつては笑われがちだった作品が今ではホラー映画の上位に入る存在として受け止められていることに驚きと喜びを語っている。2007年のQ&Aでも、映画出演について問われた際に、自分はオーディションを受けておらず、トラッシュ役はLinnea Quigleyが完璧だったとはっきり答えている。つまりStacey Q自身も、この映画と自分たちの曲の結びつきを、今なお大切な仕事として認識しているし、トラッシュという場面の象徴性もきちんと受け入れている。
その意味でTonight (We’ll Make Love Until We Die) は、80年代ホラーの有名曲という説明だけでは足りない。SSQというユニットの冷たいシンセポップ感覚、Stacey Qへつながる前史、『バタリアン』の脳みそを食べるゾンビ像、オバンバの痛み、トラッシュの墓場の踊りとその伏線回収、そしてタールマンの不気味さまで含めて読み直したとき、この曲は初めて本当の厚みを持つ。笑ってしまうのに不穏で、エロティックなのに死臭が濃く、派手なのに救いがない。Tonightは、そんな『バタリアン』そのものの感触を、3分台の音と歌詞に凝縮した一曲として聴くべき曲である。
Tonight (We’ll Make Love Until We Die)
In darkness you will find me
暗闇の中であなたは私を見つけるでしょう
I dance among the dead
私は死者に囲まれて踊る
But very soon I’ll need to hunt the scent of blood instead
だがもうすぐ血の匂いを探さなければならなくなるだろう
Rising from your earthbed
地面から這い上がる
It thickens in the air
それは空気を濁らせる
A smell both sweet and rancid, I know that you are near
愛おしさと不快な両方の匂いで、あなたが近くにいることがわかる
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
I know you think I’m nasty
汚らわしい奴だと思ってるんだろうけど
But I am no common girl
でも私は在り来たりの女の子じゃない
I once slept with the devil, it was really no big thrill
私はかつて悪魔と寝たけど、それは全くもって大した刺激ではなかったわ
The passion of the killers
殺戮者たちの情熱
Who lie in wait for me
私を待ち伏せている者たち
Just show me my own meaning of death in ecstasy
ただ恍惚の中にある死の意味するものを私に示して
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
I want you to seduce me with your terror in the cold
凍り付くあなたの恐怖と共に、私を口説いて欲しい
Make love and let me bleed to death before I get too old
愛し合い老いぼれる前に、私を出血死させて
I am not your enemy, and surely not your friend
私はあなたの敵ではないし、そしてもちろんあなたの友人でもない
But share with me your morbid love, we are the living dead
だが、その病的な愛を分かち合おう、私たちは生ける屍なのだ
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die
今宵、死ぬまで愛し合おう
Tonight, we’ll make love till we die…
今宵、死ぬまで愛し合おう…


