
Suicide SilenceのFuck Everythingは、題名だけ追うと世界への悪態で終わる曲に見える。歌詞の表面にも嫌悪や苛立ちは強く出ている。けれど、The Black Crownの時期にMitch Luckerが残していた発言と並べると、この曲が向けている相手はもっとはっきりしてくる。彼が切り捨てようとしていたのは人生そのものではなく、毎日を腐らせる情報、気分を支配する恐怖、頭の中へ流れ込み続ける外側の空気だった。全部クソくらえという叫びは、世界への降伏ではなく、自分を弱らせるものとの縁を無理やり断ち切るための言葉として置かれている。
Mitchはこの曲について、何を見ても嫌になり、ずっと塞ぎ込み、世界そのものにうんざりしているなら、それはニュースや新聞に飲み込まれているからかもしれないと語っていた。人を怖がらせ、外へ出る力まで奪うものに支配されるなという感覚が、ここにははっきりある。だからFuck Everythingは、やけくそのアンセムとして受け取ると少しずれる。中身にあるのは破滅願望ではなく、恐怖に生活を明け渡すなという切実な反発だ。
その視点で歌詞を追うと、曲の流れはかなり整理されている。世界が嫌なら俺について来いと挑発したあと、この曲は人生は短い、新しい日を迎えろ、一日ずつ進めと続いていく。怒りの温度は高いままなのに、向かっている先は自滅ではない。嫌悪と不安で頭の中が詰まっている人間に向かって、そこで止まるな、今日を潰すなと押し返している。Welcome to a nightmareも同じだ。現実が息苦しいことは認める。だが、その息苦しさに暮らしごと奪われる必要はない。その踏ん張りが、この曲の中心にある。
ここでThe Black Crown全体の変化を重ねると、Fuck Everythingの立ち位置はもっと鮮明になる。Mitchはこの時期、自分の言葉をちゃんと聞いてもらいたい、意味を持ち帰ってもらいたいと話していた。以前のSuicide Silenceには、リフを次々に叩き込み、勢いそのもので押し切る魅力があった。The Black Crownではそこに別の意識が加わる。フック、反復、曲として残る輪郭、何を言っているかが伝わる形。Fuck Everythingのサビがあれだけ直球で繰り返されるのも、その変化の中で見るべきだと思う。単純だから残るのではない。届く形まで削ぎ落としたから残る。
しかもThe Black Crownは、それまでよりずっと個人的なアルバムだった。Mitch自身が、自分の頭を割って紙に流し込んだような作品だと語っている。外向きの挑発や攻撃性だけではなく、自分の生活、自分の不安、自分の神経のざわつきまで前に出てくる。O.C.D.のような曲がその象徴だが、Fuck Everythingにも同じ時期の空気が通っている。世界が嫌だという感覚が、ただの悪態で終わっていないからだ。自分が何に削られているのかを分かったうえで、それでも押し返そうとしている声として、この曲は響いてくる。
その背景をいちばん生々しく感じさせるのが、当時のMitchの生活そのものだ。彼はOCDや潔癖傾向について隠さず話し、移動や接触の多いツアー生活に強いストレスを抱えていた。飛行機に乗れば事故を想像し、胸が締めつけられ、眠れない夜もある。それでも、ステージに立った瞬間だけは、その緊張が消えて普通に戻れるとも語っていた。Fuck Everythingの勢いは、この落差とかなり近い。現実の不快さは消えない。それでも数分だけ、自分の感覚の主導権を取り戻せる。その一撃があの曲にはある。
さらに重いのは、Mitchがその時すでに父親として生きていたことだ。彼は娘と離れてツアーに出るのがいちばんつらいと繰り返し話し、毎日連絡を取り、家にいる時は父親としての時間を最優先にしていた。掃除も洗濯も含めて家庭の時間を引き受け、首のヘルニアと慢性的な痛みを抱えていても、空いた時間があるなら治療より娘と過ごしたいと語っている。ここまで見えてからLife is shortを読むと、意味は大きく変わる。ただのロックの決まり文句には聞こえない。ツアーで長く家を空け、身体は痛み、精神も削られ、娘と一緒にいられる時間は限られている。そんな人間にとって、無駄な恐怖や外側のノイズに日々を奪われる余裕はない。だからこの曲は、怒りの歌である以上に、時間を守る歌として響く。
The Black Crownの制作環境も、その感覚を支えている。バンドはBig Bearのログキャビンにこもり、雪の中で共同生活をしながら曲を書いた。そこで強くなったのは、誰かを驚かせるための速さや難しさより、自分たちが誇れる曲を作る意識だった。以前よりも話し合い、方向を定め、ただ勢いで詰め込むのではなく、残る曲を書く。その結果としてMitchは、このアルバムを初めて心から好きだと思えた作品だと語っている。Fuck Everythingの直球さも、未整理の粗さではなく、自分たちのやりたいことが整理された先に出てきた強さとして見たほうが自然だ。
ライブとの関係も重要だ。Mitchはこの曲をMayhem Tourで毎日歌いたい曲として捉えていたし、当時のバンドは観客に曲を丸ごと歌い返される反応を強く喜んでいた。地元カリフォルニアのローカルショウのようだと感じるほど、その反応を大事にしていた。ここで見えてくるのは、Fuck Everythingがひとりで腐るための歌ではないということだ。同じ苛立ちや閉塞感を抱えた人間が、その場で一緒に吐き出すための言葉として作られている。怒りが共有へ変わる構造が、この曲をただの悪態で終わらせない。
周囲の証言まで重ねると、Mitchの輪郭はさらにくっきりする。ステージでは圧倒的で、街では気さくで、ファンにも驚くほど丁寧だった。小さな贈り物を大事に持ち歩くような人で、バンドが大きくなっても、自分たちがファンに支えられていることを忘れなかったという話が何度も出てくる。娘の存在が彼を落ち着かせ、考え方にブレーキをかけ、何を優先するかを変えたという証言も多い。そうした人物像まで見えてくると、Fuck Everythingの攻撃性にも輪郭が出る。世界全部を拒絶したい人間の歌としてより、自分を削るものは蹴り飛ばしながら、大事な相手のいる場所へ戻ろうとする人間の歌として、この曲は読んだほうがしっくりくる。
結局、Fuck Everythingの本当の強さは、乱暴な言葉そのものにはない。何を切り捨て、何を守ろうとしているのかが、その奥にはっきり見えるところにある。世の中が不快で、何を見ても嫌になり、気分が腐る時、人は世界全部が敵だと思い込みやすい。けれどMitch Luckerがこの曲でやっているのは、世界全体への降伏ではない。自分の時間、自分の感覚、自分にとって本当に大事なものを、外側のノイズから奪い返すことだ。そこまで見えてきた時、Fuck Everythingはただの暴言ソングで終わらない。The Black Crownという作品が手に入れた成熟を、もっとも荒々しく、もっとも分かりやすく刻んだ一曲として立ち上がってくる。
Fuck Everything
If you hate the world around you
もしおまえが周りの世界を憎んでいるならば
And you hate everything that you see
それでおまえは目にするものすべてを憎んでいる
And if what you see makes you happy
そして、もし目にするものがおまえを幸せにするなら
Then fuck off cause we’re all out of time
じゃあ失せろよ、もう時間切れだぜ
So follow me
だから俺を支持しろ
Life is short, I’ll make it what’s worth
人生は短い、俺はそれを価値あるものにする
With time well spent, time spent so well
有意義に過ごした時間と共に、時間を有効に使う
So don’t run away, just face the new day
だから逃げないで、ただ新しい日を迎えろ
Without a single fear in mind
心に恐れなど微塵もない
Just take it one day at a time
一日一日を大切に過ごしていこう
And fuck everything, everything
そして全部クソくらえだ、何もかも
Fuck everything, everything!
全部クソくらえだ、何もかも
If you hate the world
もしおまえが世界を憎んでいるなら
And it makes you sick what you see
それで目にする光景に吐き気がする
Then follow me
じゃあ俺についてこい
Life is short, I’ll make it what’s worth
人生は短い、俺はそれを価値あるものにする
With time well spent, time spent so well
有意義に過ごした時間と共に、時間を有効に使う
So don’t run away, just face the new day
だから逃げないで、ただ新しい日を迎えろ
Without a single fear in mind
心に恐れなど微塵もない
Just take it one day at a time
日々を大切に過ごしていこう
And fuck everything, everything
そして全部クソくらえだ、何もかも
Fuck everything, everything!
全部クソくらえだ、何もかも
Welcome to a nightmare
悪夢へようこそ
This is the place we all call home
ここは俺たちが故郷と呼ぶ場所
Welcome to a nightmare
悪夢へようこそ
This is the place we hate to call home
ここは俺たちが故郷と呼ぶのが嫌な場所
We fucking hate
俺たちは心底嫌いだ
Hate
嫌いだ
Hate
嫌いだ
Hate
嫌いだ
If you hate the world and you hate what you see
もしおまえが世界を憎み目にするものを憎むなら
Then say this with me; fuck everything (x6)
じゃあ一緒に言おうぜ;全部クソくらえ
Put your fingers in the fucking air
中指を忌々しい空中で突き立てろ
And live your life without a care
そして何の心配もなくおまえの人生を生きろ
If you hate the world and you hate what you see
もしおまえが世界を憎み目にするものを憎むなら
Then say this with me; fuck everything (x2)
じゃあ一緒に言おうぜ;全部クソくらえ
If you hate the world (fuck everything)
もしおまえが世界を憎むなら(全部クソくらえ)
And it makes you sick what you see
そしておまえは目にする光景に吐き気がする
Fuck everything
全部クソくらえ
Say this with me
一緒に言って見ろ
Fuck everything (x22)
全部クソくらえ






