We Have All Had Enough - song by Suicide Silence | Spotify

Suicide SilenceのWe Have All Had Enoughは、歌詞だけを追うとただ怒っている曲に見えやすい。知ったように振る舞う相手を突き放し、話にならないと言い切り、最後には墓穴を掘ったのはおまえ自身だと冷たく切る。表面だけ見れば、嫌悪と軽蔑をまっすぐ叩きつける一曲だ。けれど、この曲にはもう一段はっきりした芯がある。Eddie Hermida自身が、この曲は shallow negativity をめぐる曲だと説明しているからだ。

この説明が入るだけで、歌詞の見え方はかなり変わる。We Have All Had Enoughが向けている怒りは、ただ不快な誰かへの悪口ではない。中身のない否定性、浅い悲観、何かを良くするためではなくただ腐らせるための態度、その空気に向けられている。Eddieは、この曲を自分の好きな曲だと話したうえで、投げやりな何でもどうでもいいという態度ではなく、negativity に引きずられず前へ進むべきだという方向で説明している。さらに、愚かに振る舞うなら愚か者として扱われる、というところまで言い切っている。つまりこの曲は、怒りの勢いで暴れているように見えながら、実際にはかなり対象がはっきりした曲だ。

その視点で歌詞の冒頭を見ると、You act like you know という一行からもう輪郭が出てくる。問題なのは、単に嫌いな相手ではない。分かったつもりで語り、progression is lost とでも言いたげに、前へ進むことそのものを腐らせる相手だ。しかも Motivation is your tool to distort と続くことで、その相手は動機や意志までねじ曲げる存在として描かれている。ここで歌われている嫌悪は、価値観の違いへの苛立ちではなく、他人の前進や変化を歪める態度への拒絶だと考えると自然だ。

The truth is in your desires という一行も、この曲の冷たさをよく表している。相手が何を言っているかではなく、何を欲しているかに本音が出ている。表ではもっともらしいことを言っていても、欲望の置き方を見れば本性は見えるという感覚だ。そのあとに The change is within your means と続くことで、この曲は単に相手を断罪するだけでは終わらない。変われるのに変わらない、できるのにやらない、その態度まで見抜いたうえで怒っているように聞こえる。だからサビの We have all had enough は重い。ただ嫌いだと言っているのではなく、もう十分見てきた、もう十分うんざりした、という限界点の言葉になっている。

この曲の怒りが強く響くのは、一人称が途中で広がるからでもある。I ではなく We になることで、これは個人的な不満ではなくなる。語り手ひとりが我慢できないのではない。同じものに嫌気が差している側の感覚がまとまって前に出てくる。だから We have all had enough は、単なる悪口のサビではなく、共有された拒絶の言葉になる。You unrest the balance という一行も、その流れの中で効いてくる。相手はただ目障りな存在ではなく、均衡を壊し、周囲を腐らせる側に置かれている。そして There’s no speaking with you と言い切ることで、対話の段階がもう終わっていることまで示される。ここまで来ると、この曲の怒りはかなり冷静だ。感情的に荒れているようでいて、実は判断を終えたあとの拒絶になっている。

後半の You’ve dug your own grave から先は、その冷たさがいちばんよく出る場面だと思う。墓穴を掘ったのはおまえ自身だ、と責任を完全に相手へ返す。さらに I see the dirt beneath your nails と続くことで、相手は巻き込まれた被害者ではなく、自分で手を汚してきた人間として描かれる。しかも You’ve always worn your filth real well と皮肉ることで、その汚れは偶然でも一時的なものでもなく、ずっとその人間に馴染んでいたものとして見えてくる。このあたりの書き方はかなり辛辣だが、Eddieの shallow negativity という説明を踏まえると、ただ残酷なのではなく、空っぽな否定性に長く晒された末の拒絶として読める。

この曲がYou Can’t Stop Meに入っていることも大きい。あのアルバムは、Mitch Luckerの死後、Suicide Silenceが続くべきかどうか自体が問われたあとに出た最初のフルアルバムだった。しかもメンバー自身が、今まででいちばん気にかけた作品で、血を流し、汗をかき、泣きながら作ったとまで話している。Chris Garzaも、Suicide Silenceの名前を続けること自体がMitchを生かし続けることだという感覚を語っていた。そういう状況で、アルバムの後半に We Have All Had Enough が置かれている。この事実を考えると、ここで歌われる怒りはただの毒舌には見えなくなる。喪失のあとでも進むと決めたバンドが、その過程で向けられた浅い否定や中身のない悲観に対して、もうたくさんだと吐き捨てる曲として聞こえてくる。

それでも、この曲は絶望の歌にはなっていない。そこが重要だ。Eddieはこの曲について、どんな状況でも best foot forward で進むべきだという言い方をしている。つまり We Have All Had Enough は、うんざりした、終わりだ、と言うためだけの曲ではない。もう十分だと線を引き、その先で何を切り捨て、何を持って進むかを選ぶための曲だ。怒りはある。嫌悪もある。だが、その怒りは前へ進むための選別として機能している。この点が、この曲を単なる悪口ソングから引き上げている。

Don’t Die のように支える方向へ向く曲も同じアルバムにはある。その一方で We Have All Had Enough では、話にならない相手、変化を歪める相手、空っぽな否定性しか持たない相手に対して、もう十分だとはっきり言う。この両方があるからこそ、You Can’t Stop Me は再出発のアルバムとして立ちます。優しさだけでは前へ進めない。怒りだけでも進めない。支える曲と切る曲、その両方が必要だった。その中で We Have All Had Enough は、Suicide Silenceが何をもう受け入れないのかを一番はっきり示した曲だと言っていい。

だからこの曲は、ただ荒れている曲ではない。中身のない negativity を見抜き、それに付き合う段階は終わったと宣言する曲だ。知ったように語るな。変化を腐らせるな。話にならないなら、こちらももう付き合わない。そのうえで自分たちは進む。Eddieがこの曲をお気に入りだと話していた理由も、そこにあるのだと思う。We Have All Had Enough は、Suicide Silenceが喪失のあとに選んだ前進の仕方を、いちばん剥き出しの怒りで言い表した一曲として読むと、かなり強く響いてくる。

We Have All Had Enough

Let it go

手放す

You act like you know

知ったかぶりするな

You act like progression is lost

まるで進歩が失われたかのように振る舞う

Motivation is your tool to distort

動機はおまえの歪めるための道具だ

Let me move forward with you

おまえと共に進んでいこう

The truth is in your desires

真実はおまえの欲望の中にある

 

We have all had enough

俺たちはもう十分だ

You unrest the balance

おまえは均衡を乱す

There’s no darkness in a day

一寸先は闇

 

The change is within your means

変化はおまえの手の届くところにある

[Chorus]

We have all had enough

俺たちはもう十分だ

We have all had enough

俺たちはもう十分だ

 

Don’t act like you never gave a fuck

まるで気にも留めていなかったかのように振る舞うな

There is no speaking with you

おまえとは話にならない

 (No)

(いいや)

Don’t act like you never gave a fuck

まるで気にも留めていなかったかのように振る舞うな

 

There’s no speaking to you

おまえとは話にならない

 

You’ve dug your own grave

墓穴を掘ったのはおまえ自身だ

 

I see the dirt beneath your nails

おまえの爪の間に溜まった汚れが見える

You’ve always worn your filth real well

おまえはいつもその汚さを実にうまく着こなしている

[Chorus] x2