この曲が置かれている時期

TERROR『One With The Underdogs』は、バンドの初期衝動がいちばん強く前に出ていた時期の曲だ。

初期デモと1st EP『Lowest of the Low』を経て、TERRORは一気に存在感を広げていった。ショウの熱量も上がり、ツアーの規模も広がり、Scott Vogel自身も、自分の五つ目のバンドで初めてそれまでと違う広がりを体感したと振り返っている。

そうした流れの先にあった大きな次の作品が『One With The Underdogs』だった。

HardLoreでも、この作品に入る時点でプレッシャーも期待も高かったことが語られている。録音はSound Cityで行われ、Todd Jonesはツアーから少し距離を置きながらも、この作品の曲作りを担っていた。

『One With The Underdogs』は2004年にTrustkillから出たTERRORの1stフルアルバムで、のちにReaper Recordsなどから再発も出ている。

このアルバムには、長く活動した後の余裕より、勢いの中で自分たちの立ち位置を言い切る強さがある。

表題曲の『One With The Underdogs』も、その空気の中で聴くと意味がはっきりする。

前へ出ていく時期だったからこそ、Scottは自分たちがどの側から来た人間なのかを先に言葉にした。

この曲の underdogs という言葉には、その確認が入っている。

Scott Vogelの幼少期と家庭環境

Scott VogelはBuffalo近郊で、母と二人の姉妹と暮らしながら育った。

暮らしは貧しく、本人の記憶の中には、母に連れられて失業給付を受け取りに行った場面が残っている。

歌詞の Raised in unemployment lines には、その生活の手触りがそのまま残っていると読める。

家庭にも落ち着きは少なかった。

Scottは幼い頃から両親が一緒にいた記憶をほとんど持っておらず、母と父のあいだを行き来しながら育った。

母の家には愛情があった。父の家には冷たさがあった。本人はそう振り返っている。

引っ越しも多く、深い人間関係を作りにくかったという話も出てくる。

この曲の痛みは、抽象的な怒りだけでできているわけではない。

落ち着いて身を置ける場所がなかなか定まらなかったこと。自分の足場が最初からぐらついていたこと。そうした感覚が、短い言葉の奥に流れている。

Scottの歌詞は、そこで止まらない。感傷に寄りかからず、その場所からどう立つのかを前に出す。その姿勢がこの曲にもそのまま出ている。

Buffaloのhardcoreが与えたもの

Scottにとってhardcoreは、好きな音楽の一つというだけではなかった。

自分が入っていける場所だった。

その入口にいたのが義理の兄弟Jayだった。Jayに早いヒップホップやパンクを教えられ、そこからMinor ThreatやNYHCへ入っていく流れができた。

Zero Toleranceを観たときの衝撃は特に大きかったようだ。

ScottはBuffaloの核をそこに見たと話している。

River Rock Cafeのような会場も含めて、Buffaloのhardcore sceneは、ただレコードやショウを消費する場ではなく、Scott自身がそこに身を置ける共同体だった。

その流れの中から始まったのがSlugfestだった。

SlugfestはScottにとって、初めての遠征、初めてのレコード、初めて人に受け入れられた感覚を与えたバンドだった。

何も持たずに始まった人間が、初めて自分の居場所を身体で知る。その感覚が、のちのTERRORにもつながっていく。

One with the underdogs という言葉にも、このBuffaloの感覚が入っている。

負け犬たちを遠くから見ている言葉ではない。

その中にいて、その側の空気を知っている人間の言葉だ。

BuffaloからArizona、そしてCaliforniaへ

Scottの歩き方は、一直線の成功談とはかなり違う。

SlugfestのあとにDespair、さらにBuried Aliveへ進み、活動の規模は大きくなっていった。

それでもBuried Aliveの時点でScottは自分でその場を離れている。

気持ちが切れたあと、Arizonaへ移り、バンドをやめるつもりで暮らしていた時期がある。

この時間は大きい。

今の立場から過去を見ると、BuffaloからCaliforniaへ向かって順調に上がっていったようにも見える。

実際の流れには、一度止まりかけた時間が入っている。

hardcoreから少し離れた場所で生活し、仕事をし、そのまま別の人生へ進んでいてもおかしくなかった。

そこから再び動き出したのがTERRORだった。

Californiaへ向かい、Todd JonesやNick Jettと合流し、バンドは形になっていく。

当時のhardcoreの流れも独特だった。18 VisionsやEvery Time I Dieのようなバンドが前へ出ていて、伝統的なhardcoreの立ち位置が少し変わって見える時期でもあった。

その中でTERRORは、古いものを懐かしむ形ではなく、hardcoreの芯をそのまま前へ押し出した。

その時期に表題曲として置かれたのが『One With The Underdogs』だった。

曲名そのものが、TERRORの立ち位置の宣言になっている。

負け犬という言葉が残る理由

この曲の underdogs には、弱さの自己演出は入っていない。

入っているのは、持たないまま始まった人間の感覚だ。

踏みつけられてきた側の記憶。足場の不安定な場所で育った時間。居場所を探し続けた感覚。そこから立ってきた身体の感覚だ。

Scott Vogelはその後、hardcoreの顔の一人になった。

それでもこの曲に残っているのは、勝った側の論理ではない。

どこから来たのかを消さずに前へ出る姿勢だと思う。

だからこの曲は、逆転勝利の歌として聴くより、立ち位置を忘れない歌として読むほうが深く残る。

最初から恵まれていなかったこと。家庭が安定していなかったこと。居場所が見つかりにくかったこと。何度も移動し、何度もやり直してきたこと。

そうしたものをきれいに消さず、そのまま抱えたまま立つ。その感覚が、TERRORのこの曲の芯にある。

何もないと思いながら生きている人に、この曲が届くとしたらそこだろう。

別人になる話ではない。

最初から持っていなかった人間が、その感覚を捨てずに前へ進む話だ。

Scott Vogelの歩き方には、その重みがある。

『One With The Underdogs』は、その重みを短い言葉の中に押し込んだ曲だ。

こうした感覚は、2004年の初期TERRORだけに閉じたものでもない。TERRORは2026年にも新作『Still Suffer』を発表し、いまも前線で動き続けている。公式の紹介文でも、この作品では self empowerment、survival、challenge に向き合う意志が前に出されている。『One With The Underdogs』で言い切られた感覚は、懐古ではなく、今のTERRORにも続いている。

ONE WITH THE UNDERDOGS

BORN WITH NOTHING

何も持たずに生まれた

AND THAT WAS MOST OF US

そしてそれは俺たちの大半がそうだった

RAISED IN UNEMPLOYMENT LINES

失業者の列の中で育ち

GREW INSIDE DOMESTIC CRIMES

家庭内犯罪の中で成長した

ALWAYS AGAINST THE ODDS

常に不利な状況で

ONE WITH THE UNDERDOGS

負け犬たちと共に

 

STEPPED ON SINCE DAY ONE

初日から踏みつけにされてきた

TAUGHT TO ACCEPT DEFEAT

敗北を受け入れろと教え込まれ

EXPECTATIONS OF A FAILURE

失敗者であることを期待され

ALWAYS TOLD I WAS NOTHING

いつも俺は何者でもないと言われてきた

 

ALWAYS AGAINST THE ODDS

常に不利な状況で

ONE WITH THE UNDERDOGS

負け犬たちと共に

 

WE ARE THE UNDERDOGS

俺たちは負け犬だ

 

HAD TO SCRATCH AND FIGHT

必死に食らいついて戦わなければならなかった

JUST TO STAY ON MY FEET

ただ倒れずに踏ん張るために

WITH A HEART MADE OF STEEL

鋼鉄の心をもって

I SMASHED THROUGH EVERYTHING

俺はすべてを打ち砕いた

 

ALWAYS AGAINST THE ODDS

常に不利な状況で

ONE WITH THE UNDERDOGS

負け犬たちと共に