
2026年のフジロックにTURNSTILEの出演が決まった。出演日は7月24日金曜。会場は苗場スキー場。フジロックの公式発表でも、ボルチモア出身のハードコアバンドとして名前が大きく出ている。しかも今年はグラミーでBest Rock AlbumとBest Metal Performanceを取った直後のタイミングで、苗場に来る。
TURNSTILEの一番わかりやすい特徴は、ハードコアの現場で鍛えた身体性を捨てずに、ジャンルの外へ届く音と空気に変えてきたところだ。ライブは速い遅いとか重い軽いより先に、まず人が動く。そこにメロディやグルーヴや明るさを混ぜて、初見の客も巻き込む。
このバンドは2010年にボルチモア周辺で始まった。Brendan YatesはボルチモアとDCの間にあるBurtonsvilleで育ち、幼なじみのBrady Ebertと一緒に音を鳴らしてきた。2010年に友人宅の地下室でデモを録った話が残っていて、最初から豪華な環境じゃない。友達同士でやれることを積み上げて、そこからバンドになっていった。彼ら自身も、決断の基準はメンバー全員がワクワクできるかどうかだと話している。
ボルチモアの土壌もでかい。地元の荒っぽいハードコアの流れが先にあって、Gut InstinctやNext Step UpやStoutみたいな世代がシーンの輪郭を作っていた。その後にTURNSTILEが出てきた。Brendan本人も、若い頃はボルチモアとDCを行ったり来たりしながら、Next Step UpやStoutを含む地元のバンドを見て育ったと話している。ここが根っこにあるから、外に広がっても芯が抜けない。
メンバーの流れも押さえておくと分かりやすい。結成時の中核はBrendan Yates、Franz Lyons、Daniel Fang、Brady Ebertで、初期にはSean Cullenもいた。その後Pat McCroryが加わり、2022年にBrady Ebertがバンドを離れた。そこからツアー参加していたMeg Millsが正式メンバーになり、今の体制になっている。
作品の流れははっきりしている。Nonstop Feelingで土台を固めて、Time & Spaceで広がりを作り、Glow Onで一気に外側へ届いた。そこから時間をかけて、2025年6月にNever Enoughを出した。Never Enoughはアルバムとしての評価だけじゃなく、2026年のグラミーでBest Rock Albumに選ばれた。さらに収録曲BirdsがBest Metal Performanceも取っている。フジロックの紹介文がここをわざわざ書いているのも納得だ。
その直後、TURNSTILEはバンド名義の声明で、“We’re existing in a time of heightened state violence.” と書き、さらに “We are watching people be pushed out of their homes here in America, in Palestine, in Sudan, in Iran…” と続けた。アメリカ、パレスチナ、スーダン、イランで、人々が家や居場所を奪われている現実に触れた言葉だ。もちろん、この発言をそのまま「Never Enough」の公式な曲解説として読むことはできない。ただ、足場のない不安や、満たされなさが何度も戻ってくるこの曲の感触は、そうした時代の圧力と無関係には聴こえない。
インタビューや現場の発言を拾うと、TURNSTILEの現実味が出る。ツアーは止まらない。前日の全力から移動して、渋滞に巻き込まれて、ギリギリに会場入りして、そのまま本番でベストを出す。そういう日々が続く。怪我も多いから、もし能力があるなら回復力がほしいと冗談みたいに言う。こういう生活感が、音の切迫感につながっている。
音楽の幅の話も面白い。ベストリフの話でTrapped Under IceのToo Trueを挙げた直後に、Herbie HancockのChameleonまで同じテンションで出す。ハードコアから外へ伸びる感覚が、言葉の並びで一発で伝わる。コラボに対しても同じで、誰々と組みたいというより、アイデアが良くて空気が最高ならやる、というスタンスで動いている。
思想の部分は、看板を掲げて説教するタイプじゃない。どちらかというと、コミュニティの作り方のほうが前に出る。ステージと客席の境目を薄くして、一体感を作る。その一方で、食の話みたいな日常の断片として、普通のチーズは食べないからヴィーガンチーズを選ぶという発言も出てくる。ここは思想の主張というより生活の会話として出てくる温度だ。
日本での人気ももう説明がいらない段階に入っている。2024年には東京のZepp DiverCityと大阪のGORILLA HALLで単独公演をやっている。そこから2年後のフジロックに戻ってくる。フジロック側もTURNSTILEを今年の顔のひとつとして扱っていて、帰還が早いことまで書いている。
苗場で何が起きるか。TURNSTILEは、ハードコアの熱と外側の開け方を同時に持っている。だからフジロックの空気にハマる。金曜の苗場で、観客の層が混ざる。前の方は当然荒れる。でもそれだけじゃなく、後ろの方まで歌える曲もある。2026年7月24日は、その混ざり方が一番きれいに見える日になるはずだ。
NEVER ENOUGH
RUNNING FROM YOURSELF NOW
今、自分から逃げている
CAN’T HEAR WHAT YOU’RE TOLD
言われてることが耳に入らない
NEVER LET YOUR GUARD DOWN
絶対に気を抜くな
ANYWHERE YOU GO
どこへ行っても
IN THE RIGHT PLACE, AT THE RIGHT TIME
正しい場所に、正しいタイミングで
AND STILL YOU SINK INTO THE FLOOR…
それでも、消えてしまいたくなる…
IT’S NEVER ENOUGH
それは決して十分ではない
NEVER ENOUGH
決して十分ではない
NEVER ENOUGH
決して十分ではない
LOVE
愛





