
Undyingの The Age of Grace は、ひとつの事件や固有名に結びつけて読むより、バンドが当時見ていた世界をまとめて映している曲として受け取ったほうが実態に近い。歌詞の中には、現代社会への不信、地球に刻まれた傷、奪われる命、届かない叫び、支配と強欲、信仰と暴力、最後に残る命への敬意が並ぶ。視点は狭くない。社会の仕組みと、その中で人間が何をしているのかというところまで広がっている。
Undyingは早い段階から、文明そのものに疑問を向けていた。2001年の時点で、バンドは人間そのものを悪として見ていたわけではなく、責任は文明にあるという考えをはっきり口にしている。かつて人間は地球の生物共同体の一員として生きていたが、権力、罪、支配のような考えは現在の生き方の中で強くなったという見方だ。The Age of Grace の歌詞に出てくる現代、この地球に刻まれた傷、征服、規律、強欲という言葉は、この考えと重なる。
命や動物の問題も、この曲を読む時に外せない。Undyingは当時、メンバー全員がヴィーガンで、そのうち三人がヴィーガン・ストレートエッジだった。The Age of Grace に出てくる奪われた命、虐げられた肉体、苦しみに満ちた生、生命への敬意は、抽象的な残酷さのイメージだけで片づけないほうがいい。バンド自身がその生き方を選び、その言葉を現実の側にも置いていたからだ。
この曲の重さは、音の背景から見ても説明がつく。Jimmy Changは、At the Gates、Cradle of Filth、In Flames、My Dying Brideを聴いて、そこにハードコアなメッセージと基盤を持ち込みたかったと話している。The CureやDar Williamsも好んでいて、Dar Williamsについては社会意識が高い、内省的といった言い方をしている。Undyingの曲にある陰りや悲壮感は、メロディック・デスメタルの影響だけでできたものではない。痛みと内省の感触が最初から入っている。The Age of Grace の重さも、その延長線上にある。
Undyingの成り立ちを踏まえると、この曲の見え方はさらに変わる。Jimmy Changは、SammiとJonathanと一緒にCatharsisを離れ、そのままUndyingが始まったと振り返っている。Catharsisから流れ込んできた怒りや切迫感は、Undyingの核のひとつだった。Jimmy Changが2001年にCatharsisを、痛みと醜さの一つ一つに情熱を注いでいたバンドとして語っていたことも、そのつながりを裏づける。
The Age of Grace を収録した時期のUndyingは、前期とは別の段階に入っていた。Timothy Royは2025年のインタビューで、自分は2002年に声の問題で脱退し、その後はLogan Whiteがボーカルを引き継いだと話している。だから、この曲はLogan期のUndyingを考える中で読む必要がある。ただ、歌詞の考え方そのものがそこで切れたわけではない。Tim自身も、Undyingの歌詞は世界の中で自分たちの居場所を探し、どこへ向かい、どう日々を生き、世界に何を差し出せるのかを問うものだったと振り返っている。目覚めているのか眠っているのかという問いまで含めて、歌詞全体はいつも大きい場所から書かれていた。The Age of Grace は、その問いが張り詰めた形で出ている曲のひとつとして読める。
歌詞の作者についても、見通しは立つ。2005年のUndyingまわりの証言では、バンドの曲と歌詞の大半はJimmyが書いていたとされている。The Age of Grace もJimmy Changが書いた可能性は高い。ただし、この曲を自分が書いたと本人が曲名を挙げて話した資料まではまだ見つかっていない。そこは空白のまま残る。
Undyingは、自分たちが少し早すぎたバンドだったという感覚も持っていた。Jimmy Changは2019年の回顧で、Undyingのやっていた メロディック・デスメタルとハードコアを融合させたのは早すぎたと認めている。そのことは当時から分かっていたとも話している。The Age of Grace は、のちに定着した型に沿って出てきた曲ではない。Undying自身がまだ前のめりに進んでいた時期の曲として受け取るほうが自然だ。
At History’s End という作品全体の中で見ることも重要になる。One Day SaviorのChris Tzompanakisは、この作品を忘れられがちだが十分に強いレコードだと振り返っている。曲が良く、間奏曲も印象的で、アートワークも良かったという。ヨーロッパ向けアナログ盤でデザインを勝手に触った時には、Jimmyから作品の見た目を大事にしていると連絡が来たとも話している。The Age of Grace は、勢いだけで並べられた一曲ではない。At History’s End という作品全体の意識の中で置かれた曲だったことが見える。
2005年の証言では、Undyingが人に与えたかったものとして、世界に対する切迫感、思いやり、行動、自分の手で世界を変える意志が挙げられている。読むべきものとして Daniel Quinn、Derrick Jensen、Howard Zinn、Noam Chomsky の名前も出てくる。The Age of Grace は、近代文明への不信、地球と生命への加害の認識、支配の言葉への拒否、信仰と暴力の結びつきへの嫌悪、命への敬意が一つに集まった曲として受け取るのがいちばん無理がない。
後年のCatharsisの言葉まで視野に入れると、この線は途中で切れていない。2025年の文書では、社会の残酷さに取り憑かれていること、悲嘆を怒りに、絶望を決意に変えること、hardcore は今でも世界と戦うための秘密結社のようなものだということ、美しいものを守るために戦うことが語られている。Jimmy Changが今もそこにいることを考えると、The Age of Grace を一時期だけの歌に閉じる必要はない。Undyingの一曲でありながら、もっと長い思想の流れの途中にある曲として読むことができる。
The Age of Grace
Born and enslaved to this modern age
生まれながらにして、この現代という時代に奴隷にされている
Where blood stains each step of this path we have paved
俺たちが切り開いてきたこの道の一歩一歩は、血で汚されている場所だ
And what price our reign? At what cost their fate?
そして俺たちの支配の代償は何なのか?ヤツらの運命は、どんな犠牲の上に成り立っているのか?
In this night unending when dawn comes too late
この終わらぬ夜に夜明けが遅すぎる時
For each life that’s stolen and each cry unheard
奪われたひとつひとつの命と、届かぬそれぞれの叫びのために
For our lust that’s written in scars on this Earth
この地球に刻まれた傷跡に記された、俺たちの欲望のために
The lies which they teach, with forked-tongues they speak
ヤツらが教える嘘、その言葉は二枚舌で語られる
Of this world created to conquer, to rule by their greed
この世界はヤツらの強欲によって征服し、支配するために作られたものだ
Are we corrupted and ruled by their greed?
俺たちはヤツらの強欲によって堕落させられ支配されているのか?
Infected, decayed; corrupt with deceit
感染し、腐敗し;欺瞞によって堕落している
In these days of madness where misery reigns
この狂気の時代に、惨めさが支配する場所において
When all hope is abandoned in promise of pain
すべての希望が、痛みの約束の中で捨て去られるとき
And never a light from the darkness of hate
憎しみの闇から光など決して差し込まない
They hunger for death, their bodies as graves
彼らは死を渇望し、その身体は墓のようになっている
our corrupted memory dies to see through compassion’s eyes
俺たちの腐敗した記憶は、思いやりの眼差しで見たくてたまらない
Lives consumed, flesh abused, tortured existence, encaged, entombed
消費された命、虐げられた肉体、苦しみに満ちた存在、檻に入れられ、埋葬された
Freedom lost, bodies marred, eternal hell, life behind bars
自由は失われ、身体は傷つけられ、永遠の地獄、鉄格子の中での人生
Their traditions die, as we fall no longer
ヤツらの伝統は消えゆき、もはや我々が倒れることはない
With this reverence for life, we will fall no longer
この命への畏敬をもって、我々が倒れることはないだろう
In this world of the desperate and lost cast in filth
この絶望と迷いの世界で汚物の中に投げ込まれる
Compassion condemned in this nightmare fulfilled
現実となった悪夢の中では、思いやりは非難されている
The blind and their faith, to empty skies pray
盲目の者たちとその信仰は、空っぽな空に向かって祈りを捧げる
The road to their heaven and god paved with rape
ヤツらの天国と神へ続く道は、略奪で舗装されている
The hidden years have ended
隠されていた年月は終わった
The age of grace begun
恩寵の時代が始まった
The starving sound of fire, as heaven and Earth collide
飢えた炎の音、もはや天と地は衝突する
Cast off like skin this suffering, on broken knees to rise
この苦しみを皮を脱ぎ捨てるように、砕けた膝で立ち上がる
To sift through bitter ashes, to bleed like sacrifice
苦い経験をかき分けて、生贄のように血を流す
Our hearts forever burning, to breathe with newfound life
俺たちの心は永遠に燃え続けている、新たに見い出だした命を得て息をするために






