
Wake of Humanity は2015年に始まった。きっかけは、Mike Chinn が Chris LaPointe に、政治性の強いヴィーガン・ハードコア・バンドで歌わないかと声をかけたことだった。Chris は当初、仕事の都合や、自分の声がこの企画に合うかどうかで迷ったが、最終的に参加した。最初は Mike がギターを弾く想定だったが、のちにベースへ回った。At Capacity EP の録音時にも正式なドラマーはまだ決まっておらず、初期は代役を入れながら進んでいた。最初のライブは2015年11月13日で、その後2016年3月にはパシフィック・ノースウエストを回っている。2016年5月ごろ、Chris は Dropdead のライブ会場で Max に声をかけ、Max がドラムで加入した。Jeremy も加わり、その後は4人編成で進んでいく。Chris はこの時期の周辺バンドとして Anti-Self、No Future、Closed Casket、Olde Ghost、Himsa を挙げている。Mike 側の経歴としては This Time Tomorrow、Parasitic Skies、Owen Hart のちの Earth Control、Tears of Gaia が出ている。
Chris は、Wake of Humanity は最初から XVX を前面に出すつもりで始まったわけではなく、ヴィーガンとストレートエッジのメンバーがいた結果としてそうなったと話している。Mike が最初に使った言葉として militant vegan hardcore band という表現も出てくる。Chris 自身は、バンドの外でも環境と動物に人生を捧げてきたと話している。音の面では、90年代ハードコア、暗い質感のハードコア、クラストの影響を挙げている。始めた頃は、よりスラッシーで、All Out War や Integrity に近い感触があり、2018年時点では Damnation A.D.、Integrity、Tragedy に近い感触になっていると自分たちで説明している。
Wake of Humanity について Chris は、流行や話題性を追うためのバンドではなく、世界を変えたいからやっているバンドだと話している。自分たちは曲で話すことを実際に生きていて、4人とも環境、動物、社会正義に人生を捧げてきた、そのことが歌詞に反映されているという言い方をしている。At Capacity については、環境解放と動物解放を扱った作品だと説明している。Chris は、この作品では環境と動物解放にそれぞれ二曲ずつ書こうと考えたと話している。表題曲 At Capacity では、大きい視点から、環境を壊していることと、自分たちがその解決側にもなりうることを見せたかったとしている。
WA016F について Chris は、自分たちの地域で起きた一つの残虐行為を扱った曲だと説明している。人間が、オオカミとその子どもたちが家畜の暮らしを脅かすと考えたために、群れの繁殖メスが殺された事件が出発点になっている。そのうえで Chris は、そのオオカミたちは白人入植以前からその地域にいたとも話している。ライブでも、WA016F はワシントン州で殺されたオオカミの発信器番号で、その現場は自分たちが住む場所から約60マイル、その個体は群れの繁殖メスだった、保護されているはずの種なのに冷酷に殺された、人間はいまだに共存の仕方を見つけられていない、と話している。曲の説明は一頭の事件から始まっているが、そこで言われている内容は、その一頭だけにとどまっていない。保護されているはずのオオカミが人間社会の中で生き延びにくい現実や、人間がまだ共存の方法を見つけられていないことまで含んでいる。同じ流れの中で Chris は、Null and Void と Without Valor は、ヴィーガンの主題、信念を守ること、動物実験への反対に沿う曲だと整理している。
ナイル・シアターのライブでは、Chris は、会場内で動物や環境に関する資料を配っている人たちの話を見てほしい、ヴィーガンやストレートエッジの立場にある者として、動物と生態系のために世界を良くする努力を続けるべきだと話した直後に、次の曲は WA016F だと紹介している。彼は、その文字と数字はワシントン州で殺されたオオカミの発信器番号を指す、その現場は自分たちが住む場所から約60マイル、その個体は群れの繁殖メスだった、保護されているはずの種なのに冷酷に殺された、人間はいまだに共存の仕方を見つけられていない、しかもあのオオカミたちは自分たちよりずっと前からそこにいた、と話している。曲のあとには、この出来事は自分たちに近すぎる、と言っている。その日の物販では At Capacity の初回盤、再発盤、ヨーロッパ向けの特別ジャケットも出していた。新曲群は、このあと録音する Fight Resist に入る予定だとも話している。
事件側の記録では、2014年11月14日付の記事に、サーモン・ラ・サック近くで連邦保護下にあるオオカミを撃った者の有罪につながる情報に対して、1万5000ドルの報奨金が出されたとある。アメリカ魚類野生生物局はその週、アッパー・キティタス郡の Teanaway Pack にいたメスのオオカミが前月に銃で撃たれて死んだことを確認したとされている。一般には10月17日から10月28日までの情報提供が呼びかけられている。死体は10月28日に Teanaway Pack の生息地、レイク・クレ・エラム北側、サーモン・ラ・サック地域、パリス・クリーク流域の北側で回収された。個体には発信器が付いていて、その発信が止まったことから担当者が回収に向かった。予備解剖では後ろ脚まわりを撃たれていたと記されている。その地域は州法と連邦法の両方でオオカミが保護される範囲にあり、Teanaway Pack はサザン・カスケーズ方面への拡散の足がかりになりうる位置にいたとも書かれている。
別の記録では、32M はセントラル・カスケーズのオオカミ再定着を支えた中心個体として扱われている。Lookout Pack の初期の子の一頭とみられ、姉妹とともに南へ約80マイル移動してティーナウェイ・リバー・バレーを拠点にし、生涯にわたって繁殖オスとなったとされている。ワシントン州立大学の調査チームは、2014年、狩猟期の終わりのあとに繁殖メスの発信器から死亡信号を拾い、その発信源に向かって死体を森の縁で発見した。死体には骨盤を貫く銃創があり、側面から撃たれていて、弾の角度から見ると撃った相手に向かっていたわけではなかった、とその記録は書いている。報告はアメリカ魚類野生生物局に上がったが、2020年の時点でも犯人は見つかっていないとされている。そこでは、32M の最初のつれあいで姉妹でもあった 012F も、2012年に発信が消えたまま再確認されなかったと書かれている。Teanaway Pack は、外から入ってくる個体が少なく、密猟によって群れの構造が少なくとも一度は乱された孤立した群れとしても説明されている。32M は、姉妹一頭と娘二頭を含む三頭のつれあいを持ち、少なくとも五腹の子を残したとされている。
Teanaway Pack の整理文では、この群れは2011年に確認され、ノース・カスケーズ回復地域で早い時期に繁殖した群れの一つで、1930年代の絶滅後に州で確認された四つ目の群れだとされている。創設個体は Lookout Pack 出身の WA32M と WA12F で、兄妹とされている。2012年か2013年に繁殖メスの WA12F が消え、2014年初頭には WA32M とその娘あるいは姪にあたる個体たちがいた。2014年には繁殖メスが五頭の子を残した。この整理文では、2014年10月に違法に殺された繁殖メスは二歳で、当時その群れはノース・カスケーズ回復地域で繁殖に成功していた二群のうちの一つだったとされている。繁殖メスが死んだあと、残った個体が子どもたちを育て、年末までに五頭のうち三頭が生き残った。2015年に新しい子は確認されず、生き残った前年の子のうち二頭に新たな番号が与えられた。2016年には 32M と別の繁殖メスが最初の子を残した。2017年末には少なくとも八頭、2018年末には少なくとも五頭で、繁殖ペアとして扱われている。2019年末でも 32M を中心とする繁殖ペアが続いていた。2020年初頭には黒いオスが 32M を押し出し、2020年夏に 32M は死んだ。
Chris は restoration ecology についても話している。自分はフロリダの田舎で育ち、のちにアリゾナに移り、環境科学と生物学を学び、シアトルでサーモンの生息地回復のボランティアをし、大学院を経てシアトルの環境系の非営利団体で働くようになったとしている。過去15年の仕事は、環境回復に関わる教育と参加の場づくり、常勤の回復作業チームの管理、流域計画、地域の有機農場の支援などだと説明している。環境と動物を商品として扱う人間のあり方に対する反感もここで明言している。
Wake of Humanity のヨーロッパでの動きについても記録がある。Chris は2017年のヨーロッパ・ツアーを全部自分たちで組み、バン、運転手、機材に自分たちで金を出したが、悪いショウは一つもなく、最大の出来事はフラフ・フェストだったと話している。2018年の時点で、Wake of Humanity はそのヨーロッパ・ツアーをすでに終えている。Episode 82 では、MJ が Wake of Humanity は2019年夏にベルリンで Torso と共演し、フラフ・フェストにも出たと話している。シアトルのブラック・ロッジで Torso を初めて見たときは、Anti-Self、Mysterious Skin、Sidetracked、Torso などが出ていたと MJ は言っている。Torso について MJ は、ヴィーガン・ストレートエッジでありながら、ブレイクダウン頼みではなく、速く、歌詞も作りものではないと話している。MJ は、今の自分の好みに合うのはそういうものだと述べている。Episode 82 の別の箇所では、Trevor が、Wake として番組に来たのは一年半から二年くらい前だったと振り返り、MJ は、歌詞が他人事への口先だけではなく日常から出ているときに響く、曲ごとの解説を読むのが好きだと話している。
Wake of Humanity の WA016F は、At Capacity の中で環境と動物の権利の文脈に置かれた曲で、Chris はそれを自分たちの地域で起きた繁殖メス殺害事件を起点にした曲として説明している。そのうえで曲の射程は、その一頭だけにとどまらず、保護されているはずのオオカミが人間社会の中で生き延びにくい現実や、人間が共存の方法をまだ見つけられていないことまで広がっている。ライブでは、自分たちが住む場所から約60マイル、保護種、人間が共存できていないこと、オオカミのほうが先にそこにいたこと、という言い方で紹介している。事件側の記録では、2014年10月に Teanaway Pack の繁殖メスが回収され、発信器が止まったことが発見のきっかけで、後ろ脚まわり、あるいは骨盤を貫く銃創が確認されている。群れの整理文では、その繁殖メスが五頭の子を残し、三頭が2014年末まで生き残ったことが確認できる。
WA 016F
Close to home
身近な場所で
Total obliteration
完全なる消滅
Systematic extermination
組織的な絶滅
Trapped, poisoned and shot
閉じ込められ、毒殺されて撃たれた
Living on the brink of extinction
絶滅の瀬戸際で生きる
Before the humans,
人類の前に、
Before the greed,
貪欲の前に、
Before the ruins,
廃墟の前に、
Before the machines
機械の前に
Free to roam, lands unspoiled
自由に歩き回れる、手つかずの大地
From the mountains, over ridges, to the sound
山々から、尾根を越え、音に
Close to home
身近な場所で
Close to
近くで
Total obliteration
完全なる消滅
Systematic extermination
組織的な絶滅
Fear begets murder
恐怖は殺人を生む
Dying on behalf of hubris
傲慢の代償としての死
Living on the brink of extinction
絶滅の瀬戸際で生きる
Dying on behalf of hubris
傲慢の代償としての死






