酒をやめる。ドラッグをやめる。

そこまでは分かる。

でも、そこから先に進む人がいる。

食い物。服。実験。娯楽。

「これって加害じゃないのか」ってところまで行く。

Straight Edgeから始まって、xVxを通って、動物解放の話に着地する。

これは正しさ自慢じゃない。

生活の中の暴力に、目をそらさないための言葉だ。

このページは、きれいな啓発じゃない。

どこから来て、どこまで行けるのか。

そのルートだけを整理する。

sXeからANIMAL LIBERATION

生活と暴力を切り分けて語るための地図

Hardcoreには、ただ速い、ただ重いだけで終わらない系譜がある。Straight Edge、Youth Crew、xVx、VeganismAnimal Liberationへと伸びる線だ。

この線は正しさ自慢のために存在していない。むしろ逆で、人間が当たり前にやっている利用を疑うための言語として、Hardcoreが育てたものだ。ここを誤ると、思想はポスターの標語みたいになって終わる。読者が欲しいのは、標語じゃなくて「どこから来て、どこへ行けるのか」という地図のはずだ。

STRAIGHT EDGE

禁欲じゃなく選び直すための合言葉

sXeの起源は、Minor Threatの曲名と主張が大きな起点として語られる。ここで重要なのは、清く正しくではない。自分の手綱を自分で握るという態度だ。

Minor Threatは言う。“I’ve got straight edge.”(Minor Threat「Straight Edge」)

この一言は、宗教でも健康法でもなく、「自分の人生の主導権」を取り戻す宣言として響いた。

ただし、ここでよく起きるズレがある。sXeは「アルコール、ドラッグ、時にセックス」の拒否として有名になったが、それは目的ではなく、依存と麻痺に流されないための手段だった。だからこそ、後の世代が「食」「動物」「環境」へテーマを拡張していく余地が生まれた。

YOUTH CREW

ジャンルというよりムーブメントのフォーム

Youth Crewは、厳密には音楽ジャンルというよりムーブメント(活動の型)として捉える方がズレない。速いビート、合唱、前向きさ、仲間への呼びかけ。ここで鳴っているのは拳というより集合だ。

象徴的な合言葉はこうだ。“Break down the walls.”(Youth of Today「Break Down the Walls」)

これは「差別をなくそう」だけじゃない。シーンの内部にある壁、階級、見た目、所属、肩書、そういうものを壊して、今ここで繋がり直すための言葉として機能した。

そしてこの流れを記録し、広げた背骨がレーベルだ。たとえばDischordRevelation Recordsみたいな存在は、単なる流通ではなく、思想の保存装置だった。

xVx(VEGAN STRAIGHT EDGE)

禁欲が加害の拒否に変わる地点

xVx「Vegan+sXe」を示す記号として広まった。ここでポイントは、酒やドラッグの拒否よりも、加害の回路を断つ方向へフォーカスが移ることだ。

この転換を、ストレートに言い切った一節がある。Earth Crisisは並べる。

“Dairy, eggs and meat, fur, suede, wool, leather.”(Earth Crisis「New Ethic」)

これは食事の好みの話じゃない。日常の買い物が、どこかの檻や屠殺や搾取と繋がっているという現実を、単語で可視化したものだ。

つまりxVxは、「自分を汚さない」ではなく、他者(動物)を手段化しないという倫理へ向かう。

VEGANISM

思想は食事から始まるが、食事で終わらない

Veganはしばしば「肉を食べない人」と雑に理解される。だが、動物倫理の文脈ではもう少し射程が広い。「動物を食べない」だけではなく、衣類、化粧品、娯楽、実験など、動物を資源として扱う習慣全体を問い直す。

この立場を整理する際、分かりやすい対比として「Animal Rights」と「Animal Welfare」がある。Welfareが「よりマシに扱おう(利用は続く)」に寄りやすいのに対し、Animal Rightsは「そもそも使う前提を疑う」に寄る、という整理は一つの入口になる。

食品の話を身近に落とすなら、読者がまず引っかかるのはここだ。肉魚だけでなく、乳(ホエイ、カゼイン)、卵、ゼラチン、はちみつ、カルミン(コチニール色素)、シェラック、ラノリン等が「知らないうちに入る」。この見えにくさが、Veganを難しく感じさせる最大の原因になる。

ANIMAL LIBERATION

同情ではなく解放という言葉を選ぶ理由

Animal Liberation(動物解放)は、Animal rightsの中でも、より強い言葉を選ぶ。「かわいそうだから守る」ではなく、檻の構造そのものを終わらせるという語感だからだ。

この領域で頻繁に参照されるのがALF(Animal Liberation Front)ALFはリーダー不在の分散的な運動として説明され、直接行動を掲げてきた。

ここで大事なのは、記事として賛否を単純化しないことだ。目的と手段を分けて語らないと、読者は一瞬で置いていかれる。動物解放は感情の正しさの話ではなく、所有、商品化、効率の思想をどう見るか、という政治と倫理の話に踏み込むからだ。

HARDLINE

加害の拒否が、共同体の規律へ変質する危険地帯

HardLineは、しばしば「Vegan Straight Edgeの過激化」として語られる。実際、1990年代初頭に形成され、Vegan Straight Edgeに環境主義や厳格な規範を結びつけた潮流として説明される。

ここで記事が厚くなるポイントは、HardLineを単なる怖い人たちとして消費しないこと。HardLineは、次の問いを突き付けた。

倫理は「個人の選択」で終わるのか

それとも「共同体の規律」になるのか

規律化した瞬間に、別の抑圧が生まれないか

つまりHardLineは、動物倫理の正しさではなく、運動が共同体になったときの暴走を露出させた存在でもある。

その空気を、当時の言葉のまま差し込むならこうなる。

Vegan Reichはこう突きつける。“Every second three animals die in American laboratories”(Vegan Reich「Stop Talking – Start Revenging!」)

これは「かわいそう」の話じゃない。いま起きていることを数字で殴って、「行動しろ」に変える言い方だ。

Raidも同じ方向を向いている。“Our war is on, the talk must quit”(Raid「Words of War」)

口だけをやめろ、実行に移れ。ここまで直線的に言い切るから、支持も反発も生まれる。

そしてUK側の橋渡しとして語られがちなStatementは、転換点そのものを言葉にする。“Pacifism views once held no longer suit”(Statement「Prepare for Battle」)

平和主義では足りない、という宣言だ。ここで線が一段硬くなる。

それでもHardLine以降に残った重要語がある。

“to harm no innocent life”(無垢な生命を傷つけない)

これは過激さとは別に、動物倫理の背骨として今も引用され続けるタイプの一行だ。

AFTER THE HARDLINE ハードライン以降

さらに先にある人間中心主義そのものへの異議

ここからが、その先だ。HardLineの次に来るのは、単にもっと厳しいVeganではない。矛先は食生活から一段上がり、人間中心主義そのものへ移っていく。

代表的な方向性は、大きく3つに分けて語れる。

  1. Total Liberation(総解放)

    動物、地球、人間の解放を同じ線で結ぶ。Chokeholdはこう言い切る。“Animal liberation. Earth liberation. Human liberation.”(Chokehold「Burning Bridges」)

    動物だけを救っても環境が壊れれば終わりだし、環境だけを守っても人間の搾取構造が残れば破壊は繰り返される。だから全部を一本で結ぶ、という発想が出てくる。

  2. 反スペシーシズム(種差別批判)

    「人間だから使っていい」という前提を差別として疑う立場だ。ここに立つと、Veganは優しさではなく、差別構造の拒否として理解される。

  3. 反文明、深層生態学(Deep EcologyAnti-civ

    「便利さの総体が加害だ」という地点まで議論を押し上げる。賛否は割れるし誤解もされやすい。ただ、こういう地点まで話が進むという事実そのものが、記事の厚みになる。

「じゃあ具体的に何を避ける?」

ブランド名を出して現実に着地させる

思想が刺さるのは、抽象のままじゃない。買い物の棚に落ちた瞬間だ。そこで、動物由来素材の文脈で「議論やキャンペーンの対象として語られやすい領域」を、あくまで一般論として整理する。

まず分かりやすいのはファー(毛皮)。ファーフリー方針を打ち出すブランドは増えた。Gucciがファーフリーを表明し、Prada Groupもファーフリー方針を発表している。

Chanelはファーに加えてエキゾチックスキンの停止を公表したと報じられている。Versaceもファーフリーを表明している。Burberryもファーフリー方針を掲げた。

一方で、ファーをやめても論点は終わらない。次に来るのがレザー(革)とエキゾチックレザー(ワニやヘビ等)だ。ここで読者がイメージしやすいメジャーとして挙げるなら、Prada、Gucci、Louis Vuitton、Chanel、Ralph Lauren、Versaceのようなラグジュアリーはもちろん、レザー文化に直結するワーク寄りの領域(ブーツ、ライダース、バッグ)も議論の焦点になりやすい。

重要なのは叩くことではなく、素材の出どころが見えにくい商品ほど、倫理の論点が噴き上がるという現実を、読者の生活感で理解できるように書くことだ。

この線は思想ごっこじゃなく、Hardcoreが育てた現実の地図だ

Straight Edgeは、“I’ve got straight edge.”(Minor Threat「Straight Edge」)から始まり

Youth Crewは “Break down the walls.”(Youth of Today「Break Down the Walls」)で仲間を集め

xVxは “Dairy, eggs and meat, fur, suede, wool, leather.”(Earth Crisis「New Ethic」)で生活の加害を可視化し

HardLineは “Every second three animals die in American laboratories”(Vegan Reich)Our war is on, the talk must quit”(Raid)みたいな言葉で、選択を規律に変える危うさまで露出させた。

そしてその先では、Total Liberationみたいに「動物、地球、人間」を同じ線で結ぶ視点が現れる。“Animal liberation. Earth liberation. Human liberation.”(Chokehold「Burning Bridges」)

ここまで来ると、話は菜食のすすめでは終わらない。

人間中心主義を前提にした社会そのものに、どこまで異議を申し立てるのか。その問いが、Hardcoreの言葉として立ち上がってくる。