プリンスエア、Prince Ea、Why I Want This World to End

Prince Ea(プリンスEA)「Why I Want This World to End」は、環境汚染、消費社会、差別、メディアの暴力、自己肯定感の破壊――いまの世界の“狂気と混沌”を、スポークンワード(語りの詩)として容赦なく言語化した作品です。

本記事では全文の日本語訳に加え、human beings / human doingsbuy, buy, buypretty enoughなどの重要フレーズをテーマ別に解説し、「なぜ“世界が終わってほしい”と言うのか」「それでも私たちに何ができるのか」まで読み解きます。

Prince Eaとは?

Prince Ea(プリンスEA)は、米ミズーリ州セントルイス出身のスポークンワード(語りの詩)アーティスト/スピーカー/映像クリエイター。社会問題や価値観の矛盾を、短い“言葉のパンチ”と映像で一気に伝えるスタイルで拡散力を持ち、環境・差別・教育・消費社会などをテーマに作品を発表している。 SUCCESS+1


セントルイスの“ラッパー期”からの出発

地元セントルイスで育ち、学生時代からミックステープを作っていたことが、本人と地元メディアの取材で触れられています。初期は“いかにも”な悪ぶり(ポーズ)だったと振り返る文脈もあり、まずはヒップホップの表現としてスタートしたことが分かります。 STLPR


大学時代:人類学を学び、言葉の“構造”に強くなる

University of Missouri–St. Louis(UMSL)の公式記事では、Prince Ea(本名 Richard Williams)が2011年に人類学(Anthropology)を修了した卒業生として紹介されています。社会や文化、人間の行動をどう読み解くか――その土台が、後の“社会批評型スポークンワード”の骨格になっていきます。 blogs.umsl.edu


2009年:「Make ‘SMART’ Cool」が転換点になる

Prince Eaのキャリアを語るうえで大きいのが、2009年に立ち上げた “Make ‘SMART’ Cool”。Success Magazineは、このムーブメントが SMART=“Sophisticating Minds And Revolutionizing Thought” を意味すると説明しています。 SUCCESS

ここで彼は、単に曲を出すだけではなく「考えることを“かっこいい”側に持っていく」方向へ舵を切り、メッセージ主体の表現へ重心を移していきます。 SUCCESS


なぜ“スポークンワード(朗読詩)×映像”へ変わったのか

はっきり言うと、彼の核は「音楽(曲)そのもの」よりも、言葉で価値観を揺さぶることです。Success Magazineの記事でも、ムーブメント後に“thought-provoking(考えさせる)”動画を作る流れが紹介され、映像表現へ比重が移っていったことが読み取れます。 SUCCESS

この転換で、ラップの“韻”の快感は残しつつ、より広い層に届く“語り”としてスポークンワード化していった――というのが経緯として一番自然です。


名前の由来:「Prince of the Earth」

Global Citizenの紹介では、彼の別名(Prince Ea)が**“Sumerian mythology(シュメール神話)に由来し‘The Prince of the Earth’(地球の王子)”** という趣旨で説明されています。 Global Citizen


思想・メッセージの特徴(作品全体の芯)

Prince Eaの作品を貫くのは、だいたいこの3つです。

  1. 現代社会への批評(消費・メディア・差別・教育・環境など)

  2. “行動”に着地させる(親切、共感、許し、今ここ、など)

  3. 短いフレーズで刺す(対比・反復・言葉遊びで“覚えさせる”)

Prince Eaの言葉は、社会への怒りで終わらない。批判の先で「親切は伝染する」「自分から変える」という“行動”へ着地するところに、このスポークンワードの強さがある。 SUCCESS+1

Stand For Treesとの関係(環境テーマの代表作)

環境文脈で彼が強く結びつくのが、森林保全キャンペーン Stand For Trees

Wildlife Worksは、Prince EaがStand For Treesと組んで動画を出したこと、そしてStand For TreesがCode REDDにより立ち上げられたキャンペーンである点を説明しています。 Wildlife Works

South Pole(気候ソリューション企業)側のニュースでも、彼が「Dear Future Generations: Sorry」を公開し、Stand For Trees(Code REDD)への参加を促す流れが述べられています。 South Pole

またPR Newswireのリリースでは、Stand For Treesが森林保全のための“証書/クレジット”購入という仕組みを用いていることが説明されています。 PR Newswire

つまり、Prince Eaは「作品で問題提起→視聴者が具体的アクションへ」までを一本につないだ形で、Stand For Treesのキャンペーンと噛み合わせた、ということです。 South Pole+1

Dancing Shoes Productionsとは?

Dancing Shoes Productions は、映像制作者 Brandon Sloan によって作られたインディペンデント系のプロダクション(制作チーム)です。 Vimeo

Vimeoの公式チャンネル説明では、得意分野として 即興的な撮影スタイル(Improvisational Filmmaking)タイムラプスミュージックビデオストップモーションステディカム撮影カラーコレクション(色調整) などが挙げられています。 Vimeo

またSNS上でも「Dynamic Media Company」として、映像・写真などのクリエイティブ制作を掲げています。 Facebook

ざっくり言うと:“少人数でも機動力高く、撮影〜編集まで一気に仕上げるタイプの映像制作” に強いチームです。 Vimeo

Prince Ea作品との関係

Prince Ea(プリンスEA)「Why I Want This World to End」は、Dancing Shoes Productionsの投稿で 「Why I Think This World Should End | Prince Ea / Video by: Dancing Shoes Productions」 と明記されています。 Facebook

また、外部メディア側でも「この作品はDancing Shoes Productionsに掲載された(This article originally appeared on…)」として、出どころがDSPに紐づけられています。 occupy.com

加えて、別のPrince Ea関連映像でも 「Filmed & Edited by: Brandon Sloan / Dancing Shoes Productions」 とクレジットされている例が確認できます。 YouTube

Dancing Shoes Productionsの作風(この詩が刺さる理由=映像面)

Prince Eaのスポークンワード作品は「言葉」が主役ですが、DSP系の映像はそれを邪魔せず、むしろ加速させます。

  • 機動力の高い撮影(街・日常・リアルな場所で成立)

  • 編集テンポで“言葉のパンチ”を立てる(反復・対比を映像で補強)

  • 色調整(カラー)で世界観を固定する(暗さ/緊張感/希望のトーン)

こういう作りが、DSPが掲げる制作領域(撮影〜編集・カラーまで)と噛み合っています。 Vime

他の制作実績(Prince Ea以外も含めて)

地元セントルイスのカルチャー記事でも、Brandon Sloan(Dancing Shoes Productions)が Prince Eaを含む複数アーティストの映像を撮っている ことが触れられています。 St. Louis Magazine

つまりDSPは、Prince Eaだけの専属というより、地元~音楽カルチャー圏の映像制作で動いている“実働型” のチーム、と説明できます。 St. Louis Magazine+1

Why I Want This World to End

The world is coming to an end
この世界は終わりに差し掛かっている
The air is polluted, the oceans contaminated
大気は汚染されて、海は汚された
The animals are going extinct, the economy’s collapsed
動物は絶滅しつつあり、経済は崩壊した
Education is shot, police are corrupt
教育はもう終わってるし、警察は腐敗している
Intelligence is shunned and ignorance rewarded
知性は軽蔑され、無知は報われる
The people are depressed and angry
人々は落ち込んで怒っている
We can’t live with each other and we can’t live with ourselves
お互いに一緒に暮らすこともできず、自分自身とも折り合いがつかない
So everyone’s medicated
だからみんな薬を飲んでいる
We pass each other on the streets
俺たちは通りですれ違う
And if we do speak it’s meaningless robotic communication
もし話したとしても、それは意味のないロボットのようなやりとりだ
More people want 15 seconds of fame
より多くの人々が15秒の有名人になりたいと思っている
Than a lifetime of meaning and purpose
一生分の意味と目的よりもだ
Because what’s popular is more important than what’s right
だって正しいなんてことよりも人気のあることの方が大事だから
Ratings are more important than the truth
視聴率は、真実よりも大事だ
 
Our government builds twice as many prisons than schools
俺たちの政府は学校よりも刑務所を二倍多く建設している
It’s easier to find a Big Mac than an apple
リンゴを見つけるよりビッグマックを見つける方が簡単だ
And when you find the apple
そしてリンゴを見つけても
It’s been genetically processed and modified
それは遺伝子操作および遺伝子組み換えされていた
Presidents lie, politicians trick us
大統領は嘘をつき、政治家どもは俺たちを騙す
Race is still an issue and so is religion
人種は依然として問題であり、宗教もそうである
Your God doesn’t exist, my God does and he is All-Loving
おまえの神なんて存在しないんだ、俺の神は存在するし、彼はすべてを愛している
If you disagree with me I’ll kill you
もし俺に反対するならおまえを殺すぞ
Or even worse argue you to death
それよりもっと質の悪いことに、死ぬまで言い争ってやる
 
92% of songs on the radio are about sex
ラジオから流れる歌の92%はセックスについてだ
Kids don’t play tag, they play twerk videos
子供達は鬼ごっこをしないし、激しく腰を振る動画を真似する
The average person watches 5 hours of television a day
一般人は1日にテレビを5時間見る
And it’s more violence on the screen than ever before
そして、画面上の暴力はこれまで以上に増えている
Technology has given us everything we could ever want
科学技術は俺たちが望むすべてを与えてくれた
And at the same time stolen everything we really need
そして同時に、俺たちが本当に必要としているものすべてを奪い去った
Pride is at an all time high, humility, an all time low
傲慢さは過去最高、謙虚さは、過去最低
Everybody knows everything, everybody’s going somewhere
みんながすべてを知っていて、みんながどこかへ向かっている
Ignoring someone, blaming somebody
誰かを無視して、誰かを非難する
Not many human beings left anymore, a lot of human doings
もう人間(存在としての人間)はほとんど残っていない、ほとんどが人間(行動としての人間)
Plenty of human lingerings in the past, not many human beings
過去には人間の名残が数多く残されているが、人間(存在としての人間)は多くない
Money is still the root of all evil
お金こそが相変わらず諸悪の根源だ
Yet we tell our kids don’t get that degree
それなのに俺たちは子ども達にその学位を取るなと言う
The jobs don’t pay enough
仕事の給料なんて十分じゃないし
Good deeds are only done when there’s a profit margin
善い行いがされるのはそこに利益がある時だけだ
 

Videos of the misfortunes of others go viral
他人の不幸を映した動画が拡散する
We laugh and share them with our friends to laugh with us
俺たちと一緒に笑ってくれる友人たちと笑いながらそれらを分かち合う
Our role models today
現代の俺たちのお手本
60 years ago would have been examples of what not to be
60年前なら、それはなってはいけないものの例になっていただろう
There are states where people can legally be discriminated against Because they were born a certain way
ある州では、彼らが先天性のある特定の生まれ方をしたことを理由に、人々は合法的に差別されることが許されている
 
Companies invest millions of dollars hiring specialists to make
企業は、作るために専門家を雇い、何百万ドルもの資金を投じる
Little girls feel like they need “make up” to be beautiful Permanently lowering their self esteem
幼い女の子たちは美しくなるには“お化粧”が必要だと感じてしまい、自己肯定感が恒久的に下がっていく
Because they will never be pretty enough
だって彼女たちは決して十分に可愛くはなれないから
To meet those impossible standards
それらの不可能な基準を満たすために
Corporations tell us buy, buy, buy, get this, get that
企業は買え、買え、買えと、あれもこれも手に入れろと煽る
You must keep up, you must fit in
君はついていかなければならない、君は馴染まなければならない
This will make you happy, but it never does for long
これは君を幸せにするだろうけど、決して長くは続かない
So what can we do in the face of all of this madness and chaos?
では、この狂気と混沌のすべてに直面して俺たちは何ができるだろうか?
What is the solution? We can love
解決策は何だろう?俺たちは愛することができる
Not the love you hear in your favorite song on the radio
ラジオのお気に入りの曲で聴くような愛じゃない
I mean real love, true love, boundless love
つまり本当の愛、真実の愛、無限の愛
You can love, love each other
君は愛し、愛し合うことができる
From the moment we wake up to the moment we go to bed
目覚める瞬間から眠りにつく瞬間まで
Perform an act of kindness because that is contagious
親切な行いをひとつする、それは伝染するから
We can be mindful during every interaction
俺たちはあらゆるやり取りの中で気遣いをすることができる
Planting seeds of goodness
善意の種を蒔く
Showing a little more compassion than usual
いつもより、少しだけ思いやりを示す
We can forgive
俺たちは許すことができる
Because 300 years from now will that grudge you hold against Your friend, your mother, your father have been worth it?
今から300年経っても友達に、母親に、父親にその恨みを抱え続ける価値があったと言えるのか?
Instead of trying to change others we can change ourselves
他人を変えようとする代わりに自分を変えることはできる
We can change our hearts
俺たちは心を変えることができる
We have been sold lies
俺たちは嘘を売りつけられてきた
Brainwashed by our leaders and those we trust
指導者や信頼する者たちによって洗脳される
To not recognize our brothers and sisters
俺たちの仲間と仲間が見分けがつかないように
And to exhibit anger, hatred and cruelty
そして、怒りと憎しみと残酷さを示すこと
But once we truly love we will meet anger with sympathy
でも本当に愛する時、俺たちは怒りに共感をもって応えるだろう
Hatred with compassion, cruelty with kindness
憎しみには慈愛をもって、残酷さには優しさをもって
Love is the most powerful weapon on the face of the Earth
愛は地球上で最も強力な武器である
Robert Kennedy once said that
ロバート・ケネディはかつてこう言った
Few will have the greatness to bend history
歴史を曲げるほどの偉大さを備えた者はほとんどいない
But each of us can work to change a small portion of events
しかし俺たちひとりひとりが、出来事のほんの一部を変えるために努力できる
And in the total of all those act
そしてそれらの行為の総体において
Will be written in the history of a generation
時代の歴史に刻まれるだろう
So yes, the world is coming to an end
そう、世界は終わりを迎えようとしている
And the path towards a new beginning starts within you

そして新たな始まりへの道は、あなた自身の中から始まる